【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201702
留 守 山崎 聰
命終のひとつ風の中の榠樝
筋肉をほぐす運動神の留守
木の葉舞って種火のごときもの二三
村の子と立冬のうすあおい田圃
戦争の木という木あり十二月
穢土泥土まっさかさまに冬銀河
暗きより出でて暗きへ冬の鳶
十二月八日が近し漂えり
どこをどう曲れば十二月の火花
年迫る思い両国橋のたもと
【山崎主宰の選】
<火炎集>響焔2016年11月号より
赤ん坊夏に生まれて裸なり 森村 文子
蟻の列賢者が覗くまでもなく 渡辺 澄
けんめいに同じ時間を泳ぐなり 米田 規子
かにかくに五月曼荼羅終るかな 鈴 カノン
夏夕べ四谷見附の橋わたる 河村 芳子
哲学のふとうしろから土用波 篠田 香子
百声に一声まぎれ涼しかり 君塚 惠子
夏の果金銀砂子しだらでん 鈴木 瑩子
蛇苺終りはいつも母マリア 楡井 正隆
八千歩あるいてからの夏木立 小林マリ子
<白灯対談より>
菊人形展暮れてゆく隅田川 飯田 洋子
文化の日みな佳き人と思いけり 志鎌 史
江戸の粋平成の粋冬の川 酒井眞知子
冬の晴叱られながら泣きながら 塩野 薫
冬の虹あるいは泣いているのかも 佐藤由里枝
黄落の微光透明になる私 土田美穂子
あおあおと人間臭き月夜茸 森田 成子
勤労感謝の日棒一本が頼り 相田 勝子
日記買う見えぬ未来に期待して 廣川やよい
赤いものほつりほつりと冬支度 川口 史江
聴こえくる防人の歌捨案山子 小林多恵子
逝く秋の椅子深ければ深ねむり 笹本 陽子
あの頃もあの白菊のまっ盛り 大竹 妙子
あいまいなままに別れて冬の月 下津 加菜
鎮魂の植樹みちのくは小春日 辻 哲子
円虹の二重に見えし明るさよ 岩政 輝男
【山崎主宰の編集後記】
”当初の構想を消し去ったとき、はじめて絵が完成する”と云ったのは、フランスのキュビズムの画家ジョルジュ・ブラックである。
俳句について云えば、当初の構想を消すとは、つまり最初に見たもの、思ったことから離れる、ということであろう。見たものを如何にうまく云うかが俳句だと思っているとすればそれは違う。はじめに見たもの、思ったことは単なる詩のきっかけ、それを丸ごと呑み込んだ上で、あと如何にそこから離れるか、そこからが本当の俳句の作業である。心したい。 (Y)
コメントを残す