【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→shusai_haiku_201610
加齢 山崎 聰
八月の余命したたか亀が浮く
炎天の崩れる音として加齢
蜘蛛の巣のきのうとちがう囲のかたち
大地かの夏草の先はみちのく
男と女ありありと虹の彼方
盆の月みちのくことのほか白し
落蝉の骸となりて運ばるる
満月の翌日しぶしぶと加齢
枝豆の青をたどれば深海魚
台風の眼の中ふいになまぐさく
【山崎主宰の選】
<火炎集>響焔2016年7月号より
空の下で普通にくらし蝮草 森村 文子
厚き本抱え青年花の下 内田 秀子
永き日の輪郭としてゆで玉子 渡辺 澄
野遊びのつづきのように年取りぬ 中村 克子
三日だけ仙人も良し桃の花 紀の﨑 茜
あたふたと朝の筍五六本 小川トシ子
燕子花一歩も引かず尖んがらず 篠田 香子
日の色と月のいろもて花筏 君塚 惠子
五階親子三人花の昼 高橋登仕子
朧夜おぼろ深海魚の匂いして 大見 充子
<白灯対談より>
振りかえる余裕もなく蟇 多田せり奈
自販機の吐き出している夏の闇 松村 五月
突然に太鼓たたかれ盆おどり 笹尾 京子
潮の香のかぶさってくる熱帯夜 土田美穂子
足早に寡黙に丸の内八月 蓮尾 碩才
雲の峰遠いところに難破船 佐藤由里枝
旧道の人を遠ざけ桐の花 志鎌 史
夏休みがんばり屋の子はげまして 笹本 陽子
寺の鐘遠くで鳴って鱧の椀 酒井眞知子
向こう岸にあかりが見えて魂送り 飯田 洋子
定年や右往左往のあめんぼう 浅見 幸子
ゴーヤチャンプル反骨も混ぜており 波多野真代
プレートが押し合っている極暑かな 塩野 薫
花の名を忘れてしまい蟇 江口 ユキ
乱舞してここより知らず黒揚羽 川口 史江
ボーヴォワールの老いの小説夏霞 辻 哲子
【山崎主宰の編集後記】
師は一人 ― これは俳句を学ぶ上での鉄則である。あちこち出掛けていろんな俳句を学ぶ、という人がいる。言葉は美しいが、初心者にとってはむしろ有害である。これでは結局俳句がわからなくなる。俳句入門してすくなくとも十年くらいは、一人の先生についてその俳句を徹底的に吸収する。これが上達の早道である。
先生は一人。肝に銘じたい。 (Y)
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