響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2017年10月号より

響焰2017年10月号より


【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201710


かえりみて    山崎 聰


もう一歩またもう一歩ひきがえる
百日紅夾竹桃とろりとふたり
腹ぼての羅漢を嗤い宵祭
夏の闇音したようで何もなく
盆の月あれも大きなたまご焼き
しんがりは飽食の犬長崎忌
たそがれは喪の匂いして盆踊り
茂吉全集第五巻今朝の秋
かえりみて遠く熱砂の糞ころがし
僧五人ことしいちばん暑い日に

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2017年7月号より

まだねむそうなせせらぎと山椒の芽    栗原 節子
芹匂う吉永小百合いるように       森村 文子
遅ざくら風の機嫌の夜に及ぶ       山口 彩子
春ひとりことりことりと万華鏡      川嶋 悦子
白昼の深きところへ桜散る        中村 克子
いまさらに蚯蚓と父の太い指       小川 英二
東京がふわりと浮かぶ花の昼       西  博子
桜烏賊見えるものだけ見て笑う      愛甲 知子
染まりたき色にそまりてスイートピー   小林マリ子
輪郭は空に溶け出し夕桜         松村 五月

<白灯対談より>

夜のしじま青葉もくもく増えてくる    波多野真代
炎天の階段一歩また一歩         塩野  薫
ピロリ菌ビフィズス菌と梅雨の月     志摩  史
梅雨の蝶揺れながら流されながら     森田 成子
雲の峰老人にある日曜日         相田 勝子
白南風や本をリュックに聖橋       小林多恵子
濃紫陽花今日の色また今日の風      中野 充子
ひと逝きてやさしさ増しぬ白い菊     笹本 陽子
棕櫚の花思いもかけず鰐の鼻       酒井眞知子
てのひらを走る静脈熱帯夜        大竹 妙子
梔子の花身の内のきしきしと       川口 史江
よそ行きの銀座かいわい夏の月      下津 加菜
ゆるやかに老いの転がり梅雨の月     土田美穂子
寂寥の極みを真夜の冷蔵庫        大森 麗子

【山崎主宰の編集後記】

 人生のどんづまりにきているせいか、”今を生きる”ことの大切さをしみじみ思う。過去をいやおうなしに引き摺りながら、そして見えない未来を思い浮かべながら、人間は今という時をともかくも生きてゆくほかはないのだ・・・・。
 そういう意味で、俳句はまさに、”今を生きる”文芸である。”いまここわれ”とは、とりもなおさず只今の自分を生きるということにほかならない。俳句の第一歩は、もしかしたら、人生の今を確かに生きることから始まるのかも知れない。       (Y)

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