響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2017年11月号より

響焰2017年11月号より


【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201711


なにがなし    山崎 聰


どのたましいともなく揺れて夏の星
戦前もここに棲みしか山の蟻
仮の世を大きく外れ夏野原
なにがなし越中八尾盆の月
薪能肩を掴まれ振り返る
雨に倦み人にも倦みて夏の家
おおかみの剥製夏のおわるころ
蟷螂の悪所通いを許しけり
峡を出てわっさわっさと真葛原
父母祖父母兄姉おとうときのこ汁

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2017年8月号より

孔雀花ねむ少しだけ深入りす       森村 文子
安全圏か白薔薇のまんなかは       川嶋 悦子
連翹の微熱の中を歩きけり        和田 璋子
抜け道はたしかにありて昭和の日     小川トシ子
夏きざすぐるりと銀座六丁目       田畑 京子
メタセコイア伸びて五月の大東京     西  博子
蚯蚓はみみず貌あるわけでなくみみず   青木 秀夫
とくべつな夜は青くて八十八夜      秋山ひろ子
八十八夜無味乾燥にして透明       あざみ 精
牡丹咲くこの世のひみつのぞくため    笹尾 京子

<白灯対談より>

消防署に消防車いる夏の昼        波多野真代
会津から始まる古道蕎麦の花       塩野  薫
送り火や行き交う人は無口にて      志摩  史
海の日や長屋五軒の三軒目        大竹 妙子
八月の深いところを墨田川        中野 充子
オカリナの音色のごとき梅雨の月     相田 勝子
家猫の動体視力夏燕           小林多恵子
八月や一人ひとりに銀の雨        森田 成子
わが影を犬がひっぱる秋そこに      笹本 陽子
ゆっくりとオルゴール鳴り夏館      酒井眞知子
夏衣吐息のように昭和の歌        土田美穂子
雨の月豆煎る音の千住宿         廣川やよい
銀座うらみち羅をなびかせて       川口 史江
暗闇を一気に照らし盆踊り        大森 麗子

【山崎主宰の編集後記】

 俳句は、もちろん文芸ではあるが、決して特別な人の特別なものではなく、云うなれば昔から云われているように庶民の詩である。だから普通の人が普通のことばで云えばよいのだが、もうすこし云えば”普通の人間の内部にひそむ別なもの”を書くもの、つまり、普通の人が普通の生活の営みの中で、あるときふと自分の心の中を覗いたときに見た”普通でない何か”、そんなものをことばで書き留めたのが俳句だ、と云っては云い過ぎだろうか。       (Y)

« »

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*