響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2017年12月号より

響焰2017年12月号より


【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201712


昭和のおとこ    山崎 聰


野分あと西口がいまおもしろい
夜半の秋昭和のおとことして座る
月今宵首上げてティラノサウルス
柞紅葉のまんなか真昼鬼女もいて
秋の空少年谷を出てゆきぬ
進軍の法螺かそこだけ紅葉して
のぼさんと虚子と碧子と今日の月
体育の日としよりふたりなんとなく
水平思考す柞紅葉のその真下
谿落葉なにやら悪のにおいして

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2017年9月号より

海光るうつうつと著莪の咲くころ     栗原 節子
望遠鏡のぞけば少年の六月        森村 文子
悼むとはきのうの蝶の行方かな      渡辺  澄
うつらうつらと六月を踏み外す      川嶋 悦子
リラの冷えみんな離れて紙一枚      鈴 カノン
ためらわずそら豆選ぶ四人かな      伊達 甲女
万緑のまん中を遠く来て座る       西  博子
包丁を三本研ぐと夕焼ける        山口美恵子
蟷螂生ず百男百女の一番目        愛甲 知子
遥かなる族おもえば蛍かな        大見 充子

<白灯対談より>

月明りだけのふるさと橋の上       廣川やよい
何はともあれチチロ鳴き眠りけり     波多野真代
さやけしや花の図鑑と絆創膏       中野 充子
曼殊沙華天変地変曼殊沙華        志摩  史
悪人も居るにはいるが敬老日       相田 勝子
今もなお街にキューポラちちろ鳴く    塩野  薫
秋刀魚焼く路地裏あかり三軒目      森田 成子
ありありとあり蜘蛛の囲とこのくらし   大竹 妙子
供花としての野のリンドウと花桔梗    笹本 陽子
和泉式部なら乱れ咲く紅い薔薇      小林多恵子
赤として大壺に在り彼岸花        土田美穂子
新宿も渋谷も暮色八月尽         江口 ユキ
夏の霧見ればたましい座る椅子      大森 麗子
木道の木漏れ日を踏む秋初め       水谷 智子
戦争を読み終え夏を終えにけり      川口 史江
ふるさとの秋の匂いの橋渡る       下津 加菜

 

【山崎主宰の編集後記】

 見えていないものを、見えているように書く。見えているものは、見えていないように書く。云ってみれば俳句とはそんなものではないか。

 見えているものを見えている通りに書いても当り前過ぎてちっとも面白くない。見えていないものを見えていないまま書くと、なんだかわからずに伝わりにくい。

 禅問答のようだが、どだい俳句などという代物は、正体のよくわからない忍者みたいなものなのであろう。       (Y)

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