響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2018年10月号より

響焰2018年10月号より


【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201810


大和は吉野    山崎 聰


毛虫焼くことからはじめ山暮し
きょうその日いちにちだけのねむの花
八月の大和は吉野戦争へ
真夜中の異物としての冷蔵庫
どこまでも男と女盆踊り
土用丑の日海を見て空を見て
熱帯夜ひとりは置いてゆかれけり
三伏のけものめきたる草の丈
彼および彼女らそして合歓の花
縁あって月夜のバーボンウィスキー

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2018年7月号より

嘴をひらいて紅く卯月かな        森村 文子
うすものやうしろ手に柔らかいとげ    渡辺  澄
おろおろと筍茹でて雨や風        米田 規子
春疾風みじん切りをたたきのめして    鈴 カノン
麨や初恋ほろほとこぼれ         西  博子
したたかに男兄弟桜餅          小川トシ子
花水木清く正しく晴れた朝        秋山ひろ子
五月来るしみじみと右手ひだり手     高橋登仕子
嗚咽とも桜ふぶきのど真ん中       大見 充子
また一人泣かせてしまい桜どき      松村 五月

<白灯対談より>

雲海のどこにどう打つ句読点       川口 史江
太陽の申し子として西瓜食む       中野 充子
濃紫陽花穏やかにいて人の中       大森 麗子
流木のオブジェ七月のホテル       小林多恵子
川満々としたのはきっと夏の月      波多野真代
仕合せを全部つめこみ蛍袋        森田 成子
夏祭ふとよぎりたる父の匂い       廣川やよい
ねじり花ねじれて見える青い空      相田 勝子
舟虫しぐれ変哲もなく生きていて     大竹 妙子
淋しさの通り過ぎたる夏の雨       水谷 智子
砂浜を走って来る子盛夏なり       笹本 陽子
大切なものは見えずに走馬灯       田口 順子
風神も雷神も居る雲の峰         小澤 裕子
大暑の日砦に籠るように住む       江口 ユキ
あこがれは豪華客船夏の蝶        金子 良子
一年のわたしの月日松の芯        原田 峯子

【山崎主宰の編集後記】

 最近、若い人たちの俳句を読むと、恰好いいなあ、と思うことがある。もちろん俳句は作者を離れたフィクションだが、作者自身に恰好良さや時代の先取り、といった意識があるから、俳句も恰好良くなるのだろう。

 だが、俳句という文芸は、恰好良さとは正反対の、きわめて泥臭い、いわばいちばん時代遅れの文芸なのではないか。自然を愛し、人を愛し、自分を愛する、そんな今の世では一笑に付されるような、時代遅れの文芸なのではないかと思うのだがどうであろう。       (山崎)

« »

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*