響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2018年8月号より

響焰2018年8月号より


【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201808


たまご    山崎 聰


八十八夜はるかなる母らのこえ
ひきがえるうしがえるこの世は楽し
赤いものだけを見ており麦畑
いっときの狂気とも夜のアマリリス
つと逝きぬ夏の明るい日曜日
ライラック八十歳のむこう岸
還るべき空なく冷蔵庫のたまご
おやあいつ滝のむこうの蒼い顔
夏木立人形劇を素通りして
父の日のわれらもとより少数派

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2018年5月号より

液体と思ふ冬日溜りの庭         石倉 夏生
みなみかぜ春は整列して来たり      森村 文子
氷上を遠廻りして父帰る         渡辺  澄
ふと阿Q書肆百年の春の闇        加藤千恵子
北窓を開く吉報ありにけり        伊達 甲女
少年と夏目漱石冬の駅          岩崎 令子
ほほほほとただあつまって福寿草     小川トシ子
茨木のり子如月の真正面         君塚 惠子
ものの芽や太陽暦に躓いて        山口美恵子
桜あんぱん鉛筆耳に挟みながら      愛甲 知子

<白灯対談より>

五月雨るる小石ころころ里の駅      森田 成子
花衣あしたの色がきまらない       小林多恵子
どくだみの踏まれてからの底力      中野 充子
忘却のひとつ残りて花は葉に       大森 麗子
遠きざわめき五月雨を眠るかな      波多野真代
燕来る本屋の消えた商店街        江口 ユキ
できるだけめだたずそっと白牡丹     廣川やよい
山法師山の向こうにあこがれて      相田 勝子
涅槃西風とりむしけもの山頭火      大竹 妙子
つまずいてよろけて止まり黄水仙     笹本 陽子
ターナーの風景に入る薄暑かな      川口 史江
この角を曲がれば異界薔薇館       田口 順子

【山崎主宰の編集後記】

 たくさん云ったから伝わるわけではない、ということは、句会などで誰しも経験していること。なんといっても俳句は五七五、十七音の世界。たくさん云うほど却って何を云いたいのかわからなくなる。俳句は云わないで云う文芸なのである。

 主題は一つ。季語はそれを補うためにある。もっと云いたいと思ったら、その一歩手前で思い止まる。思い止まった部分は、必ず十七音の行間に滲み出て読者に訴えかける筈だ。       (Y)

« »

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*