響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2019年10月号より

響焰2019年10月号より


【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201910


幸子(ゆきこ)     山崎 聰


ねむ咲いて一切は遠いまぼろし
夜がきてやや青白い夏野菜
七月七日だれもいないから雨降る
楼蘭も火星も砂漠ポーチュラカ
地底から軍歌が湧いて日本の夏
熱帯夜神さまあつまって小声
ヒロシマの日のあくる日の幸子の忌
神ほとけどこにもいない日の八月
蟬の木にもっとも近く次男の木
平和がいちばん夏鳥の赤いくちばし

 

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2019年7月号より

逃水と一緒にY字路を右へ        石倉 夏生
東京のさくら胸騒ぎのように       森村 文子
蛇穴を出て鎌倉を迷いけり        加藤千恵子
連翹の中は哲学混み合えり        中村 克子
ひらがなで呼ばれたようで月おぼろ    西  博子
手足あしくびつらつらと四月馬鹿     青木 秀夫
月面に蝶来て止まる夢の奥        大見 充子
春しぐれ荒海すでに遠い景        楡井 正隆
花のあと残されたものみな独り      笹尾 京子
でこぼこの石とクレーン春の雨      波多野真代

 

<白灯対談より>

南国の人を恋いいて月涼し        廣川やよい
毒は魅力にエンジェルストランペット   川口 史江
自販機と並び夕焼みておりぬ       小林多恵子
晒されようか胸底を日の盛り       北川 コト
さくらんぼ愛嬌なんてめんどうな     大竹 妙子
純粋は風の青柿青かりん         相田 勝子
ねじればなねじれねじれて素直なり    江口 ユキ
茅花流し女三人東京へ          金子 良子
手も足もしっぽも伸びて猫の夏      田口 順子
八月はすべて青空無口なり        小林 基子
令和元年おだやかにおだやかに      笹本 陽子
ほたる袋せせらぎ近き山の駅       小澤 裕子

 

【山崎主宰の編集後記】

 「スコトーマ」という言葉がある。ギリシャ語で”心理的盲点”とか呼ばれているが、物理的には視界に入っているはずだが、実際には意識されていない、というようなことらしい。

 ローマの武将カエサルが云った”人はすべてが見えているわけではない。自分が見たいと思うものしか見ていない”と同じことか。

 俳句は云ってみればスコトーマのかたまり。独断と偏見の集大成である。噛み砕いて云えば”思い込み”である。ただ一点、読者の共感を得られるかどうか。そこに掛かっている。         (山崎)

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