響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2019年11月号より

響焰2019年11月号より


【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201911


人のうしろ     山崎 聰


かの記憶薄れ緑陰の二三人
あと一歩あともう一歩ほととぎす
菩提樹黄花イスラムは遠い町
夏鳥の赤いくちばし世は令和
川開き米寿のひとといて無口
山も野も真っ赤になって熱帯夜
屈葬を思いかの日のあぶらぜみ
その男バベルの塔の暑い窓
やがてくるいのちのおわり赤とんぼ
月の砂漠をはるばると人のうしろ

 

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2019年8月号より

有耶無耶に始まり五月葬の列       栗原 節子
木の芽雨アンデルセン童話の中へ     森村 文子
朦朧と五月始まり風の音         米田 規子
舟でゆく泰山木の花の下         加藤千恵子
いくばくの否定もありて花山査子     河村 芳子
国道にばたばたと旗立夏なり       岩佐  久
花水木青年紺の背広着て         秋山ひろ子
五月雨はなべて鈍色うしろから      大見 充子
ただその人のためにだけ桐の花      笹尾 京子
新しい笑顔のように五月来る       波多野真代

 

<白灯対談より>

友情はコスモスの風ゆるやかに      川口 史江
塊の近づいてくる祭りかな        小林多恵子
もう戻れないビーチパラソルと空と    北川 コト
秋はじめ昔ながらのベーカリー      廣川やよい
もうこれまでか起きあがれ蟬よ蟬     中野 充子
坂の上の空の青さに夏館         石谷かずよ
胸突坂上り百八十度夏野         森田 茂子
きりぎりすいくさばなしをすこしだけ   大竹 妙子
渾身のにいにい蟬に七日過ぐ       相田 勝子
夕暮れの谷中へび道藍浴衣        田口 順子
外つ国の古城ホテルに青い月       江口 ユキ
戦前を垣間見るよう夏の霧        辻󠄀  哲子

 

【山崎主宰の編集後記】

 「下手上手は気にするな。上手でも死んでいる画がある。下手でも生きている画がある」と云ったのは、画家の中川一政だったか。

 世阿弥も「上手は下手の手本なり。下手は上手の手本なり」と云っている。通底するものは同じだろう。

 俳句も同じことが云えるのではないか。うまいなあと思うが感動しない俳句。決してうまくはないのだが、何か心に訴えてくる俳句。つまり俳句も、かたちではなく、こころだということか。         (山崎)

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