響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2019年2月号より

響焰2019年2月号より


【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201902


ぬう と すう    山崎 聰


螻蛄鳴いて一伍一什は風の中
落城の翌日のよう崩れ簗
病院の十一月の長廊下
黄落は風神さまの出来ごころ
ぬうと来てすうと帰りぬ神の留守
東京にはじめての雪男の子
十二月八日のあとの朝の景
泥土なおかくのごとくに年暮るる
三丁目交差点前雪だるま
谷中千駄木遊んで遊んで年おわる

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2018年11月号より

一粒の時間かがやき滴れり        石倉 夏生
痛みとも凝視とも炎天の道        森村 文子
来ぬ人を待つ八月の人さし指       渡辺  澄
炎昼の蕎麦屋喪服の二三人        川嶋 悦子
八月七日立秋の文字ふと目にす      長沼 直子
どこをどうこの炎天の江東区       加藤千恵子
木の家に木の風通る立夏かな       中村 克子
あれやこれそれでも築地油照り      青木 秀夫
葵散るそういうものと気にもせず     愛甲 知子
蛍飛ぶ過去も未来も思わぬが       波多野真代

 

<白灯対談より>

善人の顔で歩いて酉の市         金子 良子
ひとりずつ家に戻りて良夜かな      小林多恵子
回りみち裏道小径銀木犀         川口 史江
暖冬やふるさとすこし遠のいて      江口 ユキ
さびしらは壁にはりつく天道虫      中野 充子
ふるさとの訛飛び交い冬の駅       廣川やよい
体の中を木漏れ日の十二月        北川 コト
ぼんやりわかれてえのころのはらっぱ   大竹 妙子
昨日とは違うかたちの冬三日月      大森 麗子
筑波山青を深めて冬立つ日        田口 順子
限界集落小粒柿を背におとこ       土田美穂子
木枯一号遠景に富士その他        相田 勝子
胸の奥真っ赤な花の秋と会う       笹本 陽子
冬ざれの哲学の道山頭火         辻󠄀  哲子

 

【山崎主宰の編集後記】

 ”俺たちはね、歌を聴いた人が自分のなかでストーリーを紡いでいく、そのきっかけ作りをするだけなんだよ”と、これはある作詞家の言葉である。

 私たちの俳句でも同じようなことが云えるのではないか。作者は詩のきっかけだけを示す。あとは読者に任せる。作者が全部云ってしまっては、読者は何もすることがない。

 作者はできるだけ言葉を惜しみ、読者の想像する場を広げる。ひとことで云えばそういうことであろう。          (山崎)

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