響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2019年6月号より

響焰2019年6月号より


【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201906


ああ加齢     山崎 聰


三月さくら暗き四月の長廊下
春の夜の人体模型ああ加齢
能因の千年ざくら朝日影
長生きの馬といて春のゆうぐれ
こどもたちとりわけあたたかい夜は
蝶縺れみちのくはいま光のなか
東京に戻ってからの春の景
虚も実も修羅もさくらの渦の中
みほとけの顔(かんばせ)おもい干鰈
四月尽斯く斯くわれら蝟集して

 

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2019年3月号より

水葬の海はくれない十二月        和田 浩一
ポケットの深いところで再会す      森村 文子
くれないの思わぬ昏さクリスマス     加藤千恵子
毎日が喜怒哀楽でひなたぼこ       紀の﨑 茜
風が鳴りごつんと冬の低気圧       伊達 甲女
遠き日のいっさいは冬の足音       青木 秀夫
鯖缶を選んでおりぬ冬の暮        山口美恵子
雪催い柱のうしろからあいつ       あざみ 精
ぼんやりと表玄関片しぐれ        楡井 正隆
極月や船から岸へ男跳ぶ         塩野  薫

 

<白灯対談より>

不器用できまじめな亀春疾風       廣川やよい
落語家と猫とベーコン風光る       川口 史江
春満月あそび疲れた子のように      小林多恵子
画用紙に二十二色の春休み        北川 コト
別れては会い木の芽風木の芽雨      相田 勝子
桜まじ通りに移動販売車         田口 順子
逢いたさは春満月の橋の詰        大森 麗子
叶うべき夢みているか白椿        大竹 妙子
万愚節異国の人ら闊歩して        江口 ユキ
ばあちゃんに言い分ありて春一番     平尾 敦子
木の芽和隣に空気のような人       金子 良子
いつ見ても嬉しい気持ち雛まつり     笹本 陽子

 

【山崎主宰の編集後記】

 俳句は自宅の机の上で作るもの、との思いは今もって変わっていない。いわゆる吟行や野外、旅行での見聞はもちろんだいじだが、それはあくまでも俳句の単なるきっかけに過ぎない。そのあとの自宅の机での作業がもっとだいじなのだ。

 俳句は、見たもの触れたものをきっかけにした、作者の全人生体験、人生観、世界観の総集編、と云っては云い過ぎだろうか。

 吟行などの俳句が評判よかったからとそのままにせず、帰ってからの後処理にエネルギーを注ぎたい。本物の俳句を残すために。       (山崎)

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