響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2019年7月号より

響焰2019年7月号より


【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201907


バチカン     山崎 聰


さくらほろほろかの世もこの世もなく
春昼のひとりっきりの鼻の先
バチカンの薄暗いところから蝶
あつまって笑って別れ著莪の花
きのうと同じいちにちが過ぎみなみかぜ
八十八のわれも男の子ぞ鯉のぼり
さりながら五月五日の晩ごはん
東京でいちにち遊びさくらんぼ
はつなつのすこし弛んだぼんのくぼ
こんな日もたまにはいいかほとほぎす

 

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2019年4月号より

夢の入口だれもいないから今年      森村 文子
女正月コトリと猫の居る気配       加藤千恵子
年の暮れあいつがしんねり墓みがく    鈴 カノン
なぜ海鼠わからないのが面白い      紀の﨑 茜
静かなる箸置きと立春の卵        伊達 甲女
加齢とはふわりと被る冬帽子       亀谷千鶴子
消えてゆくいろ十二月八日の雨      青木 秀夫
網走は風が泣く町紅椿          楡井 正隆
大寒や深海は羅生門めきて        蓮尾 碩才
はじまりは寒の鮃のうらおもて      塩野  薫

 

<白灯対談より>

春たけなわ赤灯台と白灯台        小林多恵子
われもまた硬派曇天の花こぶし      北川 コト
ふりむけば神護寺あたり花の雨      廣川やよい
花種を蒔くもうすこし生きるため     川口 史江
起立礼すすめ蛙の目借時         大竹 妙子
年々の桜年々の父母の声         相田 勝子
花咲くときも舞うときも渦の底      大森 麗子
山を恋い桃の花恋いわらべ唄       中野 充子
青空の青を確かめ花辛夷         金子 良子
体内の発芽はじまり弥生尽        森田 茂子
訃報来る三月の空傾いて         江口 ユキ
花花花楽しく遊び疲れけり        笹本 陽子

 

【山崎主宰の編集後記】

 事実と真実は違う。事実は云ってみれば眼に見えたもの、実際に体験したこと、つまり現象である。これに対して真実は、現在の事実のもっと先、もっと奥にあるもの、つまり本質である。

 だから事実をいくら積み重ねても真実にはならない。本質は眼で見るものでなく、心で感ずるものだから。

 俳句は窮極的には真実を書くものである。だから常に心を砥ぎ澄まして現実の奥にあるものを見ようとしていないと真実は書けない。       (山崎)

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