響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2020年8月号より

響焰2020年8月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202008


溷濁    山崎 聰


雪の夜をあかあかとおり玉手箱
窓際の心地よき位置蝌蚪の昼
一歩一歩奈落へ近く春の雪
遠近(おちこち)にたんぽぽ咲いて人の忌日
なにもかも遠くになって春のゆうやけ
春の月ゆっくり行こう彼の岸へ
君の名はと訊かれ戸惑う春の暮
呆気なく四月がおわり山の上
誰にもあるほのかな時間ほととぎす
溷濁のこの世かの世の望潮

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202008

森閑と     米田 規子

ペパーミントティ森閑と街五月
人を待つ橋上改札つばくらめ
青梅やひと日しとしと雨降って
限界のその先見えず卯月波
免疫力かバナナに黒い点々
うつうつと今日から明日へ洗い髪
「星に願いを」短夜のピアノ鳴る
母の日のうす紫のアイシャドー
狂いがちに体内時計夏落葉
うがい手洗い六月のきれいな空

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2020年5月号より

流木を尖らせてゐる虎落笛        石倉 夏生
遠景のおとうと蛇行して二月       栗原 節子
戛戛ときさらぎのコバルトブルー     森村 文子
父母に気づかれぬよう山眠る       渡辺  澄
風の昭和か立春の葛西橋         加藤千恵子
文学と夜のはざまの冬林檎        松村 五月
泣いたりはしないからあまた落椿     波多野真代
愚太愚太の彼とわたしと恋の猫      河津 智子
水晶の真ん中に道冬の靄         鈴木 瑩子
しずり雪闇立ち上がるひとところ     大森 麗子

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2020年5月号より

電気毛布の夢の駱駝に跨って       石倉 夏生
雪原の馬であるから眼を閉じて      森村 文子
イニシャルを入れてより疾走のスキー   渡辺  澄
オペラ果て寒月光に髪乱る        中村 克子
真っ当なつとめのおとこ春の雷      岩佐  久
上州の風まっすぐに達磨市        あざみ 精
もれくるは象の足音春隣         大見 充子
三月が昔ばなしのように来て       松村 五月
野水仙横向くときの加齢かな       秋山ひろ子
冬夕焼何もかもついこの間        塩野  薫

<白灯対談より>

一期一会や身の内の青嵐         小林 基子
青林檎湖畔の椅子とチェーホフと     小澤 什一
夏来る会長室のモジリアニ        北川 コト
アラビアンナイト万緑の水底に      加賀谷秀男
麦秋や自粛の赤子指を吸う        相田 勝子
山五月しゅっぽしゅっぽ青けむり     小林多恵子
つかのまの夢か春キャベツ喰べている   大竹 妙子
つなぐ掌の確かなぬくみ余花の試歩    石谷かずよ
蕗の葉に水を掬いし父そこに       廣川やよい
野遊びの一人ひとりにスマートフォン   川口 史江
山野から風の生まれる聖五月       森田 茂子
ほつほつと弾くメヌエット夏の雲     金子 良子
暗黙のディスタンスとり蟻の列      牧野 良子
休校の門扉に鎖つばくらめ        北山 和雄

【米田主宰の編集後記】

 七月六日荒れ模様の天候の中、五ヵ月ぶりの東京句会を開いた。その少し前から東京の感染者が増え続けて、句会参加を断念する人が少なからずいた。それでも思い切って開いた句会の参加人数は十名。ソーシャルディスタンスを取り、換気、マスク着用。句会が進むにつれ違和感も薄れ句座が和やかにななった。お互いの顔を見て意見の交換ができる本来の句会はやはり楽しいものだった。来月もその先もこのような句会ができることを願う。        (米田規子)

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