響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2020年9月号より

響焰2020年9月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202009


無頼    山崎 聰


切株に陽のこえ春のやさしい野
いつかくる別れのときのための春
春の夕焼閑居のあとは蟄居して
韃靼はさくら咲くころああ無頼
奮い立つこともなくなり春が逝く
黄金週間足早に過ぎ一人なり
夏が近しまいにち同じことをして
桃さくら散ってしまえばジュディの日
八十八夜神さま不意に降りてきて
駒志津子さん
葉ざくらの一本道を天国に

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202009

入道雲     米田 規子

雨音のやさしき日なり茗荷の子
花柄の小さなカップ緑雨かな
むんむんとカンナの黄色重い空
青梅雨や猫のセブンと師の句集
ちかごろ男子会なるもの蓮の花
試されているとも思い入道雲
揚羽蝶詩の一片の横切って
考えて迷う稲妻の只中に
感染の第二波という茂りかな
ふわっと白いパンを割り夏休み

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2020年6月号より

あたたかい地面があれば椿落つ      森村 文子
王国はコバルトブルー春の雪       加藤千恵子
たぶん老いは薄墨桜咲くように      中村 克子
今生のでろれん祭文花吹雪        鈴 カノン
春は曙まんぼうの匂いして        大見 充子
確信に変わる三月の曲がり角       松村 五月
菜の花やぼうぼうとさまよっていて    波多野真代
きさらぎや記憶ぶつかりあっていま    河津 智子
声がきこえて春夕焼の向うがわ      鈴木 瑩子
婆さまと行く探梅の上り坂        小林マリ子

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2020年6月号より

星を散りばめ三月忌の欅         和田 浩一
糸桜夜は時間をしたたらす        石倉 夏生
あたたかい地面があれば椿落つ      森村 文子
桜満開きいているのは死者の数      渡辺  澄
たぶん老いは薄墨桜咲くように      中村 克子
瞳澄む馬となごりのはだら雪       鈴 カノン
磯巾着臍は真ん中揺るぎなく       あざみ 精
確信に変わる三月の曲がり角       松村 五月
三寒四温ビーフシチューとろりとろり   北島 洋子
春の雪許されているかもしれぬ      山口美恵子

<白灯対談より>

数学B窓のむこうの僕の夏        北川 コト
馬刺屋の二階の窓の端居かな       小澤 什一
母の日やまごころ二つ掌に        加賀谷秀男
ちちははがのほほんといて夏座敷     大竹 妙子
何事のなき一日を沙羅の花        相田 勝子
風に膨らむ夏シャツのオーシャンブルー  石谷かずよ
万緑や沸々と湧くこころざし       川口 史江
言問橋渡り秋来る喜八来る        吉本のぶこ
無観客野球放送枇杷太る         森田 茂子
つれづれに聴く海の音青芒        小林 基子
卯の花腐しおじいさんの杉の下駄     廣川やよい
青田風教室までの長廊下         金子 良子
梅雨夕焼五階テラスの真正面       辻󠄀  哲子
妹に無花果甘いところだけ        鷹取かんな

【米田主宰の編集後記】

 戦争を知らない団塊の世代の一人だが、人生も終盤に差しかかった今、新型コロナウイルスとの戦争を経験するなんて予想だにしなかった。コロナ禍に加え、今年の梅雨の長さにも閉口した。いろいろなことが重なり、これまでの日常が危うくなった。しかし、こんな時こそ冷静に俳句と向き合って豊かな時間を持ちたいと思う。心の中の翼を大きく広げ自由に想像をふくらませよう。もしかしたら創造の女神が微笑むかもしれない。        (米田規子)

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