響焰俳句会

ふたりごころ

活動

第45回ネット句会(2024年2月) 報告者:小澤 悠人

**俳句と時事**

参加者32名、投句数64句、2月1日投句、2月7日選句。

 かつて新聞社の俳句欄の選者をしておられた方との会話で、「時事の句というのは、ほとんど類句・類想のたぐいで、それを何千句も読まされる身になると、もう厭というほど同じようなものを読まされるんだ」と聞いたことがある。
 今月で言えば能登半島地震だろう。能登の被災された方々の気持ちに寄り添い、無事や迅速な復旧を祈り、エールを送ることができるか・・・・・。ただ、俳句であるから、モノに焦点を合わせることでそれができれば理想なのだが、その辺はなかなか難しい。
 能登の人々の暮らしぶりはどんなものだったろう、漁師町が多かったろう。昔からの造り酒屋もあった。祭事にはどんなものがあったろう。能登に行ったことがなくても、現代ではインターネットでいろんな情報を得ることができる。ただ、情報としてではなく、被災地の方に寄り添う・・・・そんなところに焦点を合わせられたら良いのだろうと思った。

第44回ネット句会(2024年1月) 報告者:小澤 悠人

**何をフォーカスするか**

参加者31名、投句数62句、1月1日投句、1月7日選句。

 カメラには、オートフォーカスという機能があるが、どんな人でもそれなりにキレイな映像が撮れるようになっている。機械の技術で出来ることだが、俳句という言葉の世界では、やはり背景からズームインするのもズームアウトするのも作者の言葉の配置・推敲に依る技術が求められる。
 その点で、名誉主宰・主宰の特選句は、背景の世界から季語という焦点に向かって、フォーカスが会っているというのを感じた。

第43回ネット句会(2023年12月) 報告者:小澤 悠人

**自分の言葉**

参加者33名、投句数66句、12月1日投句、12月7日選句。

 今月の句会の中に、先の句会で選を受けた言葉を含む句が散見されたように思えた。「響焰俳句会」の皆さんは勉強熱心で、あちらの句会こちらの句会と学ばれているように思い敬服する。いいなぁ・・・と思った句が頭に残っていて、つい同じ言葉を使ってしまうというのは、「俳人あるある」だと思う。今一度、自分の言葉は、ちゃんと消化し、こなれているか・・・安易にオノマトペやリフレインをしていまいか、そんなことを確かめつつ投句したいものだと思った。
 その点で、名誉主宰・主宰の特選句などは、作者の言葉が作者らしさを感じさせ、十七音の言葉に調和があるように感じられた・。

第42回ネット句会(2023年11月) 報告者:小澤 悠人

**言葉の質感**

参加者32名、投句数64句、11月1日投句、11月7日選句。

 今月の名誉主宰・主宰の特選句を読み返し、ふと学生時代の美術の講義のことが思い出された。ゴッホの「星月夜」とマティスの「赤い室内」の絵を比較して、ゴッホのものは重厚感ある筆致、マティスのものは、色彩のコントラストを軽妙に描いている。俳句の場合も季語とそれを含むフレーズとの質量が合致したとき、読者と共鳴するのだと思った
 今月は、新たなネット句会の取り組み〈お試し参加〉に1名ご賛同頂き参加頂いた。津田円路さん、ご参加有難うございました。

第41回ネット句会(2023年10月) 報告者:小澤 悠人

**季題に託す**

参加者30名、投句数60句、10月1日投句、10月7日選句。

 今月の名誉主宰・主宰の特選句を読み返してみると、季語が動かず、季語中心の短詩になっているのがよく解る。俳句のそもそもの始まりは連歌の発句、その季節のご挨拶である。であるから、季語とそれを含むフレーズとは付かず離れずの関係になる。日常生活の一コマではあるが、やはり季語が主役で顕っている。自分もこんな句を詠めるようになれたらと思う。

第40回ネット句会(2023年9月) 報告者:小澤 什一

**強調するポイント**

参加者29名、投句数58句、9月1日投句、9月7日選句。

 今月の特選句を読み返してみたとき、ふと後期印象派の画家、ポール・セザンヌの「赤いチョッキの少年」という絵を思い出した。左手で頬杖をついてその上に頭を置き、右手は軽く握るように手前の机上に置いている。この絵をよく観察すると、モデルの少年の右腕が誇張されたように長いことに気づく。それによってセザンヌは、モデルの少年の部屋の奥行きを描いている。奥行きはベッドと壁・・・。それほどの短い距離ではあるが、その奥行きを、絵の中心に置かれた右腕の強調で見事に描いている。

 こうした誇張表現は、俳句に通じるものがあると常々思うが、今月の特選句は、何を読者に見せるかがハッキリしていたと思う。作者のひとつの動作がどう転じて何を見せていたか〈何を読者に見せようとしていたか〉?一つの景の奥行きをどう表現していたか?そんなところを学ばせて頂いた。

 俳句というのは面白いもので、句座を囲み、特別選者の先生の「選」を得た句を見直すことで、改めて見えてくるものがある。ネット句会の進行役を承り、真っ先に選と句評に触れさせて頂けるのは有り難いことだと改めて思う。ただ、学んだこと、感じたことを即座に自身の句に反映できないところが目下の課題であり、歯がゆく思う次第だ。

第39回ネット句会(2023年8月) 報告者:小澤 什一

**表現力ということ**

参加者32名、投句数64句、8月1日投句、8月7日選句。

 今月も特選句を読み返してみると、作者の表現力の高いものに高得点が入っていたと思いました。作者が単なる写生でその表現を終えてしまうと、当然読者にはそれ以上のことは伝わりません。作者が伝えたいこと、季語の選択・・・の過程を経てその先に見える様子を伝えてくれると、読者はそこに自己の体験であったり、俳句の言葉表現からインスパイアされて、時にそれ以上の想像を膨らませたりすることができます。自身、たいした句を詠んでいないので申し訳ありませんが、句会を通してそんなことを学ばせて頂きました。

 句会参加者の皆様にはお知らせしましたが、投句・選句のフォームを決めさせて頂くことにしました。どうぞよろしくお願い致します。

第38回ネット句会(2023年7月) 報告者:小澤 什一

**言葉の先に顕れるもの**

参加者32名、投句数64句、7月1日投句、7月7日選句。

 今月の特選句を改めて読み返してみると、言葉の向うに、はっきりと景が顕れていることが分かります。何に焦点を合わせ、それをどう言葉で切り取るか・・・。そんなところが大事なのだと改めて思った次第です。十七音でそれを成し遂げるのですから余分なものを切り捨てていかなければなりません。
 今回、エクセル変換ソフトの互換性の問題で、一部の方のスマートフォンで、ある句稿が見えないというトラブルが発生し、ご不便をおかけしました。ただ、これはそれぞれのモバイル機種・端末の相違による問題なので、私の方ではどうにも致し方ありません。こちらで普通に見えているものが、見えない方がいる・・・という、なんとも狐につままれたような話ですが、こんなこともあるのだなと驚きました。
 来月からエクセルファイルに加えて、PDFファイルでも送信しますので、見やすい方で確認頂ければと思います。よろしくお願い致します。

第37回ネット句会(2023年6月) 報告者:小澤 什一

**それぞれの花を咲かせよう!**

参加者32名、投句数64句、6月1日投句、6月7日選句。

 まずは、今月から蓮尾碩才さんからこのネット句会の司会進行を引き継がせて頂いて、この一つのシステムを立ち上げから、ここまで定着させて下さった蓮尾さんに感謝と共に本当にお疲れ様でしたと労いたい。
 さて、65周年祝賀式典で、「それぞれの花を咲かせよう!」というスローガンが掲げられた。このスローガンを頭の片隅に置きつつ、作品集を見させて頂いて、確かに個々の個性が表れている。この、個々の個性を結び合わせているのは、俳句という定型詩の型であり、季語という季節を象徴する言葉に対する、日本人ならではの感性である。この「座の文学」と言われる世界で、他の方の個性と向き合うことで、自分自身の言葉の精度をより高められたらと改めて思った。
 七月投句分から選者が加藤千恵子さんから中村克子さんに交代となります。加藤さんには半年間選句を頂き有難うございました。また、中村克子さん、今後半年宜しくお願いします。

第36回ネット句会(2023年5月) 報告者:蓮尾 碩才

**価値判断**

参加者30名、投句数60句、5月1日投句、5月7日選句。

 五月の東京句会で山崎先生から「一句の中で作者の価値判断はなるべくしない」と指摘されました。作者の価値判断とは、一句の中に「可笑しい」「美しい」、「悲しい」、「楽しそう」等の形容詞はなるべく避けると言うことだと思います。本来このような言葉は読み手が判断することで、作者が価値判断ををすると句を読んだ時の読み手の想像力を阻害することになるのでしょう。
 今月は大型連休のせいか山崎先生から「全体的に作品が低調です」と厳しい指摘がありました。俳句の道にゴールはありません。皆さん頑張りましょう。

第35回ネット句会(2023年4月) 報告者:蓮尾 碩才

**俳諧味**

参加者30名、投句数60句、4月1日投句、4月7日選句。

 今月の東京句会での山崎先生の句評や、ネット句会での米田主宰特選句の句評に、俳諧味のある句との表現がありました。俳諧は俳句の源流とも言うべきもので、「俳諧連歌」とも言われ、滑稽味で江戸時代に大変流行したものです。
 正岡子規により文芸として昇華された俳句にも、この滑稽さが俳諧味あるいは俳味として選句の重要な対象になっているのではないでしょうか。

第34回ネット句会(2023年3月) 報告者:蓮尾 碩才

**口語俳句**

参加者30名、投句数60句、3月1日投句、3月7日選句。

 今月は河津智子さんの<まだ死ねぬとことん春をまったから>の句が米田主宰の特選になりましたが、主宰の句評に「口語調で軽く詠って」とありました。
 俳句は文語・歴史的仮名遣いで、また韻文で書くべきと言う主張もあるようですが、話し言葉を上手く使った魅力のある句もまた多くあります。山崎先生も文語・口語については「固定的、厳密に考えず、広く〝現代の俳句の書き言葉〟として捉えたらどうか」(『続シマフクロウによろしく』)と述べています。
 文語には文語の魅力、口語には口語の魅力があり、それぞれ正しい使い方で作句を心掛けたいものです。

第33回ネット句会(2023年2月) 報告者:蓮尾 碩才

**意外性**

参加者33名、投句数66句、2月1日投句、2月7日選句。

 俳句には意外性が不可欠のようです。しかしわずか十七音の世界で意外性のある言葉を入れることはなかなか難しくどうしても予定調和の句になりがちです。一句全体の句意を損なわないで意外性のある言葉を入れるにはそれなりの訓練が必要になります。
 今月の作品で特別選者三名の選(並選)を得たのは戸田富美子さんの<手の平のすずなすずしろ母の声>の句でした。

第32回ネット句会(2023年1月) 報告者:蓮尾 碩才

**俳句は端的に**

参加者28名、投句数56句、1月1日投句、1月7日選句。

 1月の東京句会で山崎先生は「俳句は端的にそしてはっきりと」と指摘されました。言葉遣いが巧みでも内容が意味不明では読み手の心を摑むことは出来ません。十七音の中でどれだけ端的に表現できるかが句の良否を決めることになるのでしょう。
 今月は新年早々の句会で、皆さん多忙のせいか参加者が若干少なめでした。また正月のせいか作品の出来は全体に低調で、山崎名誉主宰と米田主宰からは「特選句を選ぶのに苦労した」との指摘がありました。
 今月から加藤千恵子さんが特別選者に加わりました。

第31回ネット句会(2022年12月) 報告者:蓮尾 碩才

**副詞はかな書きで**

参加者33名、投句数66句、12月1日投句、12月7日選句。

 12月の東京句会で山崎先生から句の中の副詞はかな書きが良いと教えられました。副詞とは、更に(さらに)、正に(まさに)、易々(やすやす)など一文のなかで他の言葉の意味を詳しく説明する品詞です。
 確かにこのような副詞を使うときは、かな書きにした方が句全体として柔らかくなるようです。
 1月から選者が渡辺澄さんから加藤千恵子さんに交代となります。渡辺澄さんには半年間選句を頂き有難うございました。また加藤千恵子さんよろしくお願いします。

第30回ネット句会(2022年11月) 報告者:蓮尾 碩才

**三人の選**

参加者32名、投句数64句、11月1日投句、11月7日選句。

 「選句に正解と絶対はない」とは山崎名誉主宰の言葉ですが、ネット句会は名誉主宰・主宰・渡辺澄さんの三名の方が特別選者となって、参加者の互選とともに選句に当たっていただいています。従って三名の特別選者の意見が合うことはあまりありません。
 今月は三選者の特選獲得とは行きませんでしたが、小林マリ子さんの句が三名の選(特選二・入選一)を獲得し、また川口史江さんの句が入選ながら三名の選を獲得しました。また互選では中村克子さんの句が十五点と圧倒的な選を獲得しました。選句に絶対や正解はないながら、多くの選を得たことは優れた句と言えるでしょう。

第29回ネット句会(2022年10月) 報告者:蓮尾 碩才

**条件設定**

参加者32名、投句数64句、10月1日投句、10月7日選句。

 10月の東京句会で山崎先生から一句の中に条件設定の言葉を入れると、読む側に制限が加えられ、句が小さくなるので注意が必要との発言がありました。条件設定の言葉とは、「坂の道」「午後三時」「二つ三つ」などで、作句する時に便利でつい使いたくなる言葉です。しかしこのような言葉を使うと句の広がりがなく、読み手の自由度を奪い結果的に作品の質が落ちてしまうということなのでしょう。条件設定の言葉を入れる時はよほどの注意と努力が必要となります。

第28回ネット句会(2022年9月) 報告者:蓮尾 碩才

**意味を消す**

参加者31名、投句数62句、9月1日投句、9月7日選句。

 9月の東京句会での句評の中で、山崎先生は意味を説明する俳句は駄目だと何度も指摘されました。
 意味を説明した俳句は事柄の俳句であり詩ではなくなる。意味や事柄の先に詩があるはずだと何度も指摘されましたが、作句の段階で実現することはなかなか難しいことだと実感しました。「俳句は本来意味を云う詩では断じてない。肝に銘じて欲しい」(『続シマフクロウによろしく』)をあらためて胸にきざみました。

第27回ネット句会(2022年8月) 報告者:蓮尾 碩才

**八月の俳句**

参加者33名、投句数66句、8月1日投句、8月7日選句。

 <八月や六日九日十五日>、詠み人多数と言われるこの句の作者を巡って、鴻俳句会出版の小林良作著『「八月や六日九日十五日」真の先行句を求めて!』や毎日新聞に掲載された楷未知子氏の「『八月や』の謎」等でずいぶん話題を提供したのはもう五年ほど前と思います。結局のところは長崎県の出身で広島県尾道市の医師・諌見勝則氏(故人)が最初の作者となっているようです。
 作者はともかく、この句の言う通り八月は何とも重たい月です。戦争に関連する日々だけでなく十二日は日航機墜落事故もあり、毎年八月に行われる一連の行事が終わると、何だか気の抜けたような感じになるのは私だけでしょうか。
 今月のネット句会にも八月を季語とする句が投句されています。八月という言葉が負っている宿命をベースにしながら、少しでも明るい八月の句を作りたいと願っている一人です。

第26回ネット句会(2022年7月) 報告者:蓮尾 碩才

**季語との関わり**

参加者35名、投句数70句、7月1日投句、7月7日選句。

 今月から特別選者の内一名が和田浩一さんから渡辺澄さんに交代となります。いろいろな視点から選句を頂くよう、半年交代でお願いしている一環です。渡辺澄さん、半年間なにとぞよろしくお願いします。
 選について山崎先生は「選はあくまで参考であり、絶対や正解ではない。選の結果を採用するもしないも、全て作者の責任である」(『続シマフクロウによろしく』)という主旨を述べています。新しい選者の渡辺澄さんの選を、私たちがどのように生かすか、句会の参加者に問われているようです。