現在ただいま生きている人間の、いまの熱い思いをふたりごころで詠う・・・

響焔誌より
山崎主宰の作品、選評、編集後記などを掲載しています。

響焰誌より

響焰2020年4月号より


【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202004


ひたすらに     山崎 聰


いまもって秩父往還年の暮
この道をまっすぐ行けば冬の墓
ひたすらにきょうを炭焼竈として
世のおわりそのいちにちを雪降って
雪晴れのまぶしき日々のすべり台
逡巡も邂逅も冬のいちにち
就中かの日かの夜の雪の山
男には見えて遠嶺の初日影
いまも楼蘭しろじろと寒の餅
二年一月三日の朝のモーツァルト


【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202004


走り出す     米田 規子


束の間の逃亡月寒く白く
手探りのみちのり春の星小粒
如月のはや走り出す光かな
まいにちが新鮮桜冬芽の数
寡黙なる中年バレンタインの日
日溜りのまるごと春の乳母車
大いなる迷路きさらぎの空真青
その恋の思わぬほうへ風信子
百千鳥大地は眠りから覚めて
背負いたる形なきもの山笑う

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2020年1月号より

ひらがなに力ありけりねこじゃらし    石倉 夏生
今ごろは遠い音する紅葉山        森村 文子
いつの日か秋風となる言葉かな      渡辺  澄
金木犀六腑やわらかに目ざめ       山口 彩子
秋の空からんからんと年取りぬ      中村 克子
葛の風かすかに負けているような     河村 芳子
大花野一丁目から風になる        西  博子
薄原分け入ればマンモスの背       大見 充子
しんしんと夜が来ている金木犀      秋山ひろ子
晩秋に後ろ姿のありにけり        楡井 正隆

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2020年1月号より

八月が終わり軍手に五指の穴       和田 浩一
今ごろは遠い音する紅葉山        森村 文子
晩秋を飛んで銹びゆく翅のいろ      山口 彩子
風の数珠玉あの人もあの山も       加藤千恵子
まだ渡る長き橋あり秋の空        中村 克子
葛の風かすかに負けているような     河村 芳子
初紅葉水音蛇行して下る         西  博子
川上に川下にまた霧深し         岩佐  久
秋薔薇に半歩近づく憧れて        松村 五月
誰が咲かせた二丁目の曼珠沙華      笹尾 京子

 

<白灯対談より>

冬の饒舌西口の少女たち         北川 コト
焼芋を割れば二つの太陽だ        加賀谷秀男
冬の森辿りつけないものがたり      大竹 妙子
少年はいつも空腹寒昴          原田 峯子
眉すこし太目にかきぬ女正月       相田 勝子
坂道のちいさなうねり初御空       小林多恵子
追いかけて走って転んで冬帽子      森田 茂子
図書館の小さな時計寒の入        金子 良子
日記果つめぐる地の声天の声       辻󠄀  哲子
あの頃のように子犬と冬帽子       石谷かずよ
数え日の診察室のコンピュータ      廣川やよい
魁夷の青か蒸し焼きのブロッコリ     川口 史江
存分に風とあそんで干大根        小林 基子
春立つ日高層ビルの反射光        江口 ユキ

 

【米田主宰の編集後記】

 「俳句が上手くなるにはどうしたらいいですか?」初心のころ諸先輩に質問をしてみた。「多作多捨」「舌頭千転」「人の俳句をたくさん読む」等の答えが返ってきた。ある方は、「俳句の本を三冊読んだからって三冊分上達するわけじゃない。」と。どのご意見も「なるほど!」と思ったが、決して近道はないのだとわかった。そして今、「継続は力なり」と強く思う。好調不調の波、体調や環境などの問題を乗り越えて共に頑張りたいと願う。        (米田規子)

響焰2020年3月号より


【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202003


とおいところ     山崎 聰


夜の霧旅のおわりの一伍一什
柞紅葉越後になつかしきひとり
倫敦遠しきのうきょう霧降って
ときどきの昭和平成冬の晴れ
越後みち信濃みち柞もみじみち
霧の街道牧水も白秋も
冬山のおちこち灯りその奈落
神さまの山をおもいて雪の道
父や母や雪降っているとおいところ
誰かれのこと夜が来れば雪降れば


【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202003


ひとつ咲き     米田 規子


裸木に艶ヨコハマの海の風
冬日影西洋館に人の声
山茶花やさよならのあと碧い空
冬レモン大きく育ち締切日
クレーン車の雨に休みて阪神忌
漆黒のグランドピアノ拭き真冬
ひとの世の迷路の出口雪女郎
沈思黙考寒椿ひとつ咲き
伏し目がちにもの言う男暖炉の火
春隣コンソメスープに塩・胡椒

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2019年12月号より

波音におもさ加わる晩夏かな       栗原 節子
ぼんやりと由緒正しき秋祭り       森村 文子
いくたびも夏過ぎて東京に川       渡辺  澄
よろめいてしまえば秋風のままに     山口 彩子
彼の人も彼の月山も菊の酒        加藤千恵子
前略のように八過ぎにけり        中村 克子
五丁目の空の途中を赤とんぼ       秋山ひろ子
レコード針飛んで昭和の長き夜      石井 昭子
木犀のこぼれ散るには明るい日      松村 五月
ふるさとは日傘さしたるまほろばよ    波多野真代

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2019年12月号より

鶏頭の力を借りて反論す         石倉 夏生
波音におもさ加わる晩夏かな       栗原 節子
お祭りの渦の外ひゅうと風        森村 文子
公園に研屋来ている秋の昼        川嶋 悦子
彼の人も彼の月山も菊の酒        加藤千恵子
孤独よりすこし離れてブラームス     鈴 カノン
山葡萄太郎次郎を引きよせて       西  博子
五丁目の空の途中を赤とんぼ       秋山ひろ子
小さい秋みんなで二重橋渡ろ       志摩  史
望郷やいつもどこかに鉦叩        波多野真代

 

<白灯対談より>

冬日和猫と見ている隅田川        金子 良子
街中の靴音高くシクラメン        北川 コト
ふる里は明るく遠し冬の月        大竹 妙子
立冬やカラスが降りる交差点       加賀谷秀男
風呂敷の日本酒二本北颪         廣川やよい
年用意まず包丁を研ぎはじむ       相田 勝子
ポケットの底のほころび風花す      小林多恵子
生と死を越えゆく光クリスマス      辻󠄀  哲子
冬木立胸の奥まで透けてくる       川口 史江
食卓の朝刊冬の日と影と         石谷かずよ
残されてマトリョーシカの冬座敷     小林 基子
蕪村の忌歩き始めてもう日暮       原田 峯子

 

【米田主宰の編集後記】

 これまでの私の人生で、経験したことがないほど慌しい年末年始が嵐のように過ぎ去り、そのあと息継ぐ暇もなく立春を迎えた。

 この三ヵ月間、響焰の皆さんから届く俳句をお一人ずつ時間をかけて拝見した。特に会員の方々の俳句をもっと良くしたいと思い、いろいろ添削を試みた。そのことに没頭し過ぎたかもしれない。添削が成功したか否か定かではないが、俳句というポエムを通して共有できる世界があることは素晴しいと思う。        (米田規子)

響焰2020年2月号より


【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202002


ぼそと     山崎 聰


秋のやまとはるいるいとけものの眼
おおかたは別の世界の霧の中
満月のあくる日忽と逝き給う
秋もおわりかいま越の国灯る
十一月の快晴さびし山はなお
旅のおわりはあかあかとさむざむと
月山をほたほたあるき十二月
ぼそとつぶやき寒月光の真下
柱状節理鈴振って雪の中
山に雪おじいおばあら息災か


【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202002


えんぴつと紙     米田 規子


とっくりのセーター追い風向かい風
黒いかたまり東京の冬の雨
ちちとはは白山茶花の明るさに
ハードルの二つ三つ四つ紅葉山
えんぴつと紙月の光の二十五時
静寂から音楽生まれ冬木の芽
いちにちを使い切ったり聖樹の灯
へろへろと一人三役実千両
おさなごに笑窪がふたつ春隣
ベッドに沈みまなうらの冬銀河

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2019年11月号より

夕端居ひとりは死者の匂いして      渡辺  澄
何せんか立秋ついと現れて        山口 彩子
万緑のかたまりとして男体山       川嶋 悦子
花びらの風のいちまいアイヤ節      鈴 カノン
うつらうつらと蟬くる前の大欅      中村 克子
而して土用丑の日予約席         西  博子
もて余す細長いしっぽ残暑かな      亀谷千鶴子
奥千の星の流れは背泳ぎか        山口美恵子
ライオンの檻に風吹き夏休み       志摩  史
八月や海底のぞき見るような       波多野真代

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2019年11月号より

蜘蛛降りて来る薄明の現世かな      石倉 夏生
波高し少年たちの夏おわる        栗原 節子
虫籠はいまも空っぽ夏休み        渡辺  澄
楽園を追われてよりの蛇嫌い       川嶋 悦子
青野原人の暮しのはるばると       加藤千恵子
晩夏光父の帽子が遠ざかる        中村 克子
梅雨あがるモーツァルトの曲にのせ    紀の﨑 茜
空蟬と果実の匂い夕ごころ        秋山ひろ子
炎天のまんなかを行くジャコメッティ   小林マリ子
旅のまほろばコウノトリ夏山河      波多野真代

 

<白灯対談より>

錦秋やちちはは姉といもうとも      大竹 妙子
晩秋の風追いかけて曲り角        北川 コト
青空に番いの蜻蛉行き止まり       加賀谷秀男
始まりは銀杏黄葉の交差点        小林 基子
貼り足してうさぎの切手十三夜      相田 勝子
紅葉晴れ長い手脚がポチ連れて      川口 史江
やわらかい光に満ちて秋の海       江口 ユキ
短日の搭乗口で別れけり         廣川やよい
味噌蔵の影ながながと秋の声       田口 順子
冬将軍天馬の蹄ひびかせて        小澤 裕子
草の絮われ追い越して犬の消ゆ      石谷かずよ

 

 

【米田主宰の編集後記】

 俳句には、絶対にこれが正解というものがない。そこが一番悩ましいところで、作句も選句もあれこれ迷い考えを巡らせたのち、ようやく〝これだ!〟と自分なりの納得に辿り着く。句会では実に様々な個性に出会い、驚いたり共鳴したりしながら、お互いの俳句を鑑賞している。考えてみれば、大変贅沢な時間を共に楽しんでいるのだ。真剣な大人の遊びと言えようか。だから俳句は競争ではなく、まず自分の個性を磨くことが大切と思う。   (米田規子)

響焰2020年1月号より


【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202001


そして     山崎 聰


月の夜の理科教室の人体図
十月はうすむらさきの樹々の影
やまとまほろば詩に遠く炭を焼く
釣瓶落としとりのこされて二三人
秋空はいまも青空父母祖父母
柱状節理人といて秋のなか
谿もみじそして神さまほとけさま
木の実落つえちごの里のまくらがり
偶数も奇数もなくて峡の秋
そぞろ寒象形文字のように寝て


【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202001


吾亦紅     米田 規子


降り立ちてすっぽりと秋山迫る
音立てて歳月が逝き吾亦紅
せつせつと手紙から声星月夜
もう一人の私のうしろ鵙猛る
冬に入る大きな力はたらいて
年月の匂いの書棚木の実落つ
ふるさとに古いトンネル雁来紅
文化の日磨けば光る鍋の底
ありがとう枝付き葉付き柿の艶
十一月の空気のように父と母

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2019年10月号より

白塗りの檻に白熊油照り         石倉 夏生
浜昼顔このさびしさを描けという     森村 文子
蛍にはほうたるの闇赤い月        山口 彩子
夏蝶の曳いてくるなり三輪車       加藤千恵子
モノクロの夢からさめて沖膾       鈴 カノン
沈黙の蠢いている炎天下         中村 克子
揚げ花火左小指を握られて        山口美恵子
とんぶりが弾け故郷立ちあがる      大見 充子
六月の月東京の暗がりに         松村 五月
さりながら門司下関夏の海        波多野真代

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2019年10月号より

梅雨夕焼己を閉ざす鍵の音        和田 浩一
不敵なり甚平を着て五歳         栗原 節子
耳奥の音とこしなえ星祭         森村 文子
大夕焼けむりのように遺さ        加藤千恵子
沈黙の蠢いている炎天下         中村 克子
あしたへの点と点々木葉木菟       河村 芳子
蛇口まで夏が来ている午前五時      亀谷千鶴子
追憶の一番奥の蛇いちご         大見 充子
ソーダ水泡のむこうの夜と昼       石井 昭子
六月の月東京の暗がりに         松村 五月     

 

<白灯対談より>

うらおもてなく十月の空自由       北川 コト
あんなふうにあのころあきのゆうぐれ   大竹 妙子
さみしさは生まれた時から零余子飯    小林 基子
桃太郎金太郎いて大花野         田口 順子
野の花のおおきな秋を抱きけり      小林多恵子
菊日和めがね屋の説く改憲論       相田 勝子
有明月に話そうか逃げようか       加賀谷秀男
三山の秋ふっくらと塩むすび       廣川やよい
人生の節目ふしめの菊の花        川口 史江
野仏の深きほほえみ秋闌ける       江口 ユキ
どっしりと埴輪の女神豊の秋       金子 良子
山葡萄そろそろ鳥の騒ぐころ       石谷かずよ

 

 

【米田主宰の編集後記】

 ようやく令和2年響焰1月号ができ上り、響焰の灯をなんとか繋ぐことができたと安堵している。新体制の響焰の船出には多くの困難が待ち受けていると思うが、いろいろな方々の知恵と力を結集して乗り越えたい。

 俳句という五・七・五の世界に魅了された我ら、毎月投句される作品から一人ひとりの熱い思いや心の叫びなどが感じられる。これからも大いに俳句を楽しむと同時に、真摯に研鑽を積んで俳句に磨きをかけたい。         (米田規子)

響焰2019年12月号より


【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201912


秋 へ     山崎 聰


光るなり八月ゆめもまぼろしも
平穏無事か原爆の日はとうに過ぎて
野のほとけ山のほとけも夕焼けて
みずうみはるかかくしてわれら秋へ
十三夜たとえばユーフラテスあたり
いわし雲東京駅にあの二人
蛇笏の忌コスモス揺れるばかりにて
上州のまっすぐな道木の榠樝
すこしだけ秋のにおいも雨のあと
やや寒く大東京のいしだたみ

 

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2019年9月号より

やわらかな色から吹かれ森五月      栗原 節子
めらめらと新樹新樹のため匂う      森村 文子
竹皮を脱ぐためらいのひと処       山口 彩子
夏の雲たとえば夢の容して        加藤千恵子
天に水たっぷりとある植田かな      中村 克子
令和元年六月のみずたまり        青木 秀夫
帰去来の上野駅から青嵐         あざみ 精
月へ堕ちたし青水無月の睡夢       大見 充子
ぼんやりと生きて青水無月のなか     蓮尾 碩才
水無月やものみな音を消していて     波多野真代

 

<白灯対談より>

露天湯に牛の話も豊の秋         小林多恵子
走り来て明かりの中へ夜学生       廣川やよい
傷口はたとえば一切れの檸檬       北川 コト
永遠のきずな男郎花女郎花        川口 史江
複雑な人間模様クレマチス        森田 茂子
台風の端に吹かれて日が暮れて      江口 ユキ
何事のなき一日の零余子飯        相田 勝子
曖昧をすべて振り切り望の月       小林 基子
八月尽あんな日こんな日浮遊して     大竹 妙子
台風が去って島唄島言葉         田口 順子
階段の窓が明るい十三夜         小澤 裕子
秋の雲昭和平成追いかけて        石谷かずよ

 

 

【山崎主宰の編集後記】

 繰り返して云うが、俳句に正解はない。なんでもありの世界、正解は自分が作るものなのだ。

 だから、俳句は教わったり、習ったりするものではない。人間の感動は教えたり習ったりできないのだから。

 俳句は自得するもの。もっと云えば盗むものなのだ。

 このことだけは、しっかりと胸に刻み込んでおいて欲しい。         (山崎)

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