響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2020年2月号より

響焰2020年2月号より


【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202002


ぼそと     山崎 聰


秋のやまとはるいるいとけものの眼
おおかたは別の世界の霧の中
満月のあくる日忽と逝き給う
秋もおわりかいま越の国灯る
十一月の快晴さびし山はなお
旅のおわりはあかあかとさむざむと
月山をほたほたあるき十二月
ぼそとつぶやき寒月光の真下
柱状節理鈴振って雪の中
山に雪おじいおばあら息災か


【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202002


えんぴつと紙     米田 規子


とっくりのセーター追い風向かい風
黒いかたまり東京の冬の雨
ちちとはは白山茶花の明るさに
ハードルの二つ三つ四つ紅葉山
えんぴつと紙月の光の二十五時
静寂から音楽生まれ冬木の芽
いちにちを使い切ったり聖樹の灯
へろへろと一人三役実千両
おさなごに笑窪がふたつ春隣
ベッドに沈みまなうらの冬銀河

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2019年11月号より

夕端居ひとりは死者の匂いして      渡辺  澄
何せんか立秋ついと現れて        山口 彩子
万緑のかたまりとして男体山       川嶋 悦子
花びらの風のいちまいアイヤ節      鈴 カノン
うつらうつらと蟬くる前の大欅      中村 克子
而して土用丑の日予約席         西  博子
もて余す細長いしっぽ残暑かな      亀谷千鶴子
奥千の星の流れは背泳ぎか        山口美恵子
ライオンの檻に風吹き夏休み       志摩  史
八月や海底のぞき見るような       波多野真代

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2019年11月号より

蜘蛛降りて来る薄明の現世かな      石倉 夏生
波高し少年たちの夏おわる        栗原 節子
虫籠はいまも空っぽ夏休み        渡辺  澄
楽園を追われてよりの蛇嫌い       川嶋 悦子
青野原人の暮しのはるばると       加藤千恵子
晩夏光父の帽子が遠ざかる        中村 克子
梅雨あがるモーツァルトの曲にのせ    紀の﨑 茜
空蟬と果実の匂い夕ごころ        秋山ひろ子
炎天のまんなかを行くジャコメッティ   小林マリ子
旅のまほろばコウノトリ夏山河      波多野真代

 

<白灯対談より>

錦秋やちちはは姉といもうとも      大竹 妙子
晩秋の風追いかけて曲り角        北川 コト
青空に番いの蜻蛉行き止まり       加賀谷秀男
始まりは銀杏黄葉の交差点        小林 基子
貼り足してうさぎの切手十三夜      相田 勝子
紅葉晴れ長い手脚がポチ連れて      川口 史江
やわらかい光に満ちて秋の海       江口 ユキ
短日の搭乗口で別れけり         廣川やよい
味噌蔵の影ながながと秋の声       田口 順子
冬将軍天馬の蹄ひびかせて        小澤 裕子
草の絮われ追い越して犬の消ゆ      石谷かずよ

 

 

【米田主宰の編集後記】

 俳句には、絶対にこれが正解というものがない。そこが一番悩ましいところで、作句も選句もあれこれ迷い考えを巡らせたのち、ようやく〝これだ!〟と自分なりの納得に辿り着く。句会では実に様々な個性に出会い、驚いたり共鳴したりしながら、お互いの俳句を鑑賞している。考えてみれば、大変贅沢な時間を共に楽しんでいるのだ。真剣な大人の遊びと言えようか。だから俳句は競争ではなく、まず自分の個性を磨くことが大切と思う。   (米田規子)

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