【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→ Shusai_Haiku_201310
匍匐
風葬を思えば郭公の真昼
ふたつながら虹の高みへ夕間暮
青時雨船長罐を焚き多忙
兜虫畳に這わせ模糊といる
海に山に太初の炎(ほむら)夏休み
そのあとの抜弁天の暑い雨
尺蠖の匍匐前進あと青空
石切って石運び出す夏の暮
喝采のまっただなかの暑さかな
少年の青みて遠く夏の果て
【山崎主宰の選】
<火炎集>響焔2013年7月号より
一瞬をいくつも繋ぎ椿落つ 石倉 夏生
地球儀を回してみても昭和の日 伊藤 君江
青き踏む善人はどこかに消えて 渡辺 澄
捨てるもの捨て春の山登りけり 米田 規子
花に雨けむりのように眠るなり 沖 みゆき
さくらふぶきを逃れてからの五欲 和田 璋子
川曲る私も曲る朧かな 亀谷千鶴子
いちにちを微熱のように花の雨 河村 芳子
ひらがなのままの一日春の山 金 松仙
短編のその先雪の残る駅 秋山ひろ子
<白灯対談より>
向日葵咲いて大空が碧すぎる 大見 充子
財嚢を叩くや虎落笛が鳴る 伊達 サト
鉤の手に登る坂みち淩霄花 高橋登仕子
七月やぐいと近づき海の駅 石井 昭子
青空の前と後ろと山の蟻 篠田 香子
うすれゆく記憶のなかの花サビタ 岩田セイ子
ちちははの並んで渡る虹の橋 佐藤由里枝
捌かれてたちまち土用鰻かな 笹本 陽子
梅は実に影ながながと喪の帰り 水野 禮子
黴の書に父の書き込みある晴れた日 相田 勝子
押し潰されて干涸びて熱帯夜 菅野 友己
蟾蜍動けばうごく山の風 中村 直子
目薬の一滴熱し日雷 土屋 光子
六月の遠い記憶にパリの雨 小笠原良子
まほろばの空にちちはは朴の花 若林 佐嗣
睡蓮と動物眠る青い園 辻 哲子
水無月や回転ドアを花の束 小林マリ子
奈落までほんのいっとき淩霄花 あざみ 精
黒揚羽記憶の底に山の地図 上野やよひ
【山崎主宰の編集後記】
日本人はとかく群れたがる、と云われる。それは同質を求めるからであろう。つまり、人と同じであることで安心し満足する心理である。たしかにそれは気楽で心安まることには違いないが、自立の精神からはほど遠いのではないか。
俳句は云うまでもなく個の作業であり、孤の仕事である。群れて同質化したところからは、本当の詩は生まれない。
群れない、孤立を怖れない、異質を誇る。俳句の道は意外と厳しい。 (Y)
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