【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→ Shusai_Haiku_201311
少数派
不機嫌なむこうの闇をひきがえる
かくも長き沈黙八月の波間
あかあかと檻の三匹敗戦忌
猛暑日の一汁一菜ふと笑う
惨たりし記憶のひとつ旱雲
埃吹く町に住み古り終戦忌
晩夏晩節圧倒的に少数派
餡パンとお化けの話納涼船
柘榴熟れる太陽系の端っこで
秋蝉の全身全霊人の家
【山崎主宰の選】
<火炎集>響焔2013年8月号より
縦列に毎日がくる夏が来る 石倉 夏生
蟻として日向日陰を蟻の道 伊関 葉子
雲雀野を歩いてゆくと丸木船 森村 文子
三軒長屋まん中はみなみかぜ 渡辺 澄
人形を抱けば目を開く昭和の日 相田 勝子
おおかたは春の藻となりねむるなり 鈴 カノン
花のあと海の方から大黒天 篠田 香子
母の日は翼を下さい母に逢う 田部井知子
朧の夜人間臭き自動ドア 中村 克子
原発がタンポポ抱いて立っている 内田紀久子
<白灯対談より>
鉄橋とお化け煙突極暑かな あざみ 精
飛ぶ夢の語りつくせぬ鳳仙花 伊達 サト
浜昼顔ひいふうみっつ跳ねている 高橋登仕子
浮遊する前頭葉にサングラス 岩田セイ子
追いかけて蛍の闇を真正面 菅野 友己
川沿いをまっすぐ行けば夏休み 篠田 香子
癒されて小さな秋の曲り角 大見 充子
いささかのそよぎにも似てあかとんぼ 佐藤由里枝
たましいと夢つながりぬ凌霄花 笹本 陽子
八月をよいしょと越えて空の青 石井 昭子
八月やものみな青く遠ざかる 相田 勝子
ひらひらと少女が走り夏の果 小笠原良子
ひくらしやへなへな座る歯科の椅子 土屋 光子
向日葵と帽子の記憶廃線路 水野 禮子
静かさの極まっている寺の秋 若林 佐嗣
叶うなら銀河鉄道盆の月 辻 哲子
サンテグジュベリ空き瓶に薔薇一輪 多田せり奈
尺取虫きょう一日を律儀なり 小林マリ子
ちちははもはらからもいた夏休み 五十嵐美砂子
青空は大きなひらがな夏休み 楡井 正隆
【山崎主宰の編集後記】
選はあくまでも参考である。俳句に絶対や正解がないと同様、選にも絶対や正解はない。参考意見を提示しているに過ぎない。同様に、句会などでの評も、そのときの、その人の思いつきに近い見解であって、決して正解ではない。だから、決めるのはあくまで作者本人。選の結果や句会での意見を採用するもしないのも、すべて作者自身の責任においてなされるべきことである。
但し、俳句に正解はない、選は絶対ではないということを未熟の隠れ蓑にしてはなるまい。 (Y)
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