響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2013年4月号より

響焰2013年4月号より

【山崎主宰の俳句】

塀の穴

初明りあふりか見えるはずもなく
薺粥わたくしごとのはじめなり
日短か遠い景から舫い船
冬の鳶はるかなるものみな青く
女正月もやもやとかつあわあわと
日の当る順に踏まれて冬菫
雪の朝ベートーベンと塀の穴
赤光や雪の津軽を朝発ちて
天下国家にもかかわりて猫の恋
鬼やらい鬼の生国何処(いずく)なる

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2013年1月号より

天上の十月山に来て思う     伊藤 君江
異国語を聞くともなしに秋桜   森村 文子
一念の一本ずつの曼珠沙華    廣谷 幸子
曲がるまで詩人のあゆみ枯木星  奈良岡晶子
秋天にもっとも近く日曜日    加藤千恵子
秋の噴水逡巡は人にあり     野復美智子
まんじゅしゃげ脳神経に異常なく 松田 起子
行く秋の日本列島から便り    河村 芳子
実直な日本の色柿の秋      中原 善江
夕暮れは水の匂いしこぼれ萩   山村 則子

<白灯対談より>

石蹴って地球を蹴ってお正月       石井 昭子
鵙猛る冬一切を拒絶して         高橋登仕子
冬晴れのもっとも遠い山河かな      佐藤由里枝
大寒や頑固な男面白く          大見 充子
初明りすこし重たい家族なり       笹本 陽子
大くしゃみタイムスリップして戻る    菅野 友己
着ぶくれてアメリカ大陸見ておりぬ    篠田 香子
ひょっとこの手が風すくう初神楽     土屋 光子
寒入日まんなかにいる赤ん坊       小笠原良子
雑念は雑念として一月の川        岩田セイ子
生国の夜空を仰ぎ雪だるま        若林 佐嗣
踏み出してどこまで枯野エディット・ピアフ 辻  哲子
三日はや生者のなかのひとりにて     あざみ 精
一団の平行移動初詣で          江口 ユキ
玄関をあふれて子らのお正月       相田 勝子
声あげて雪の竹藪立ち上る        中村 直子
テーブルに薔薇とフォークと女正月    斉藤 淑子
追いかけておいかけられて十二月     上野やよひ
一月やきのうとちがう今日の風      飯田 陽子

【山崎主宰の編集後記】

季語が、とってつけたように、私はここにいますとばかり居直っている俳句は、概してつまらない。あとから季語の存在に気が付く、そういうさりげないのが好ましい。

要するに歳時記を金科玉条として、首っ引きで俳句を作ることの愚。歳時記に書いてあることは、あくまで一つの意見に過ぎない。季語は自分で見付けるものなのである。

芭蕉も<季語の一つも探り出したらんは、後世によき賜>と云っているではないか、(Y)

 

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