【山崎主宰の俳句】
雪のあと
形而上的雪の結晶灯るころ
千年を生きるつもりの大海鼠
今生のいつとはなしに牡丹雪
未来あり二月綿虫よく飛ぶ日
雪のあと東京駅の煙出し
沸騰し発火し微塵雪解川
早春のメタセコイアは風待つ木
風花のあと杳として團十郎
猫の恋光と翳と一伍一什(いちぶしじゅう)
西行の山河に遠く春の風邪
【山崎主宰の選】
<火炎集>響焔2013年2月号より
川を見て桜もみじへ戻りけり 栗原 節子
紫といえどいろいろ古典の日 伊関 葉子
黄落の下り坂なら転がって 森村 文子
十一月まっすぐ海に突き当る 米田 規子
十三夜生きるものみな耳を立て 芹澤美香子
走ることとうに忘れて猫じゃらし 河村 芳子
どっと来てどかりと在す十二月 小川トシ子
行く秋の背中小さくなるばかり 金 松仙
山に行き海見て帰る秋日和 篠田 香子
寂しさとちがうさびしさ冬薔薇 中村 克子
<白灯対談より>
不機嫌な犬と歩きぬ梅日和 小笠原良子
建国記念日赤ちゃんの握りこぶし 菅野 友己
この道を帰るほかなし月朧 高橋登仕子
碧落を一羽きりなる寒さかな 大見 充子
三月のとおくに丸い非常口 篠田 香子
冬が逝く思い通りの明るい灯 笹本 陽子
生国の方になだれて春の虹 佐藤由里枝
日記買い三年先をふと思う 岩田セイ子
いろいろな別れがありて冬の駅 石井 昭子
王様の兵隊ごっこ黄沙来る 相田 勝子
人の世へけものを放ち山眠る 若林 佐嗣
密やかなくらしのゆれる木の芽晴れ 中村 直子
ペリカンの嘴からこぼれ春の水 土屋 光子
ほどほどの距離のぬくもり春の山 飯田 洋子
枯木星音符弾けているような 楡井 正隆
末黒の芒太古のにおいかもしれず あざみ 精
寒星の中ゆるやかに一機影 上野やよひ
カクテルの細目のグラス冬の月 斉藤 淑子
【山崎主宰の編集後記】
作品の添削は、できればしない方がよいのだが、一定の数を載せるために、やむをえず最小限度に手を入れることがある。原句の意図を損なわないよう、すこしだけ直すというのは、意外と難しい 。
かなり苦労して添削して雑誌に載せたのに、本人からは何のコメントも返ってこないことが多い。私の添削について作者がどう思っているのか知りたいのだが、全くの無関心というのはなんとも淋しい。 (Y)
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