【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→ Shusai_Haiku_201307
日本人
漕ぎ出して四月大空から翼
春雷のがんばっているひとところ
童心のかすかなゆらぎ花筏
金色の桜が咲いて日本人
花万朶漂っている待っている
墜ちながら四月の色の渚まで
放心ののちの千年桜闇
暗転は洛中にあり花篝
崩落のまんなか八十八夜の灯
抱かれてねむる遠山脈の青むころ
【山崎主宰の選】
<火炎集>響焔2013年4月号より
たまご酒風の荒野のように居り 和田 浩一
冬凪汽笛ドーナツの穴の向う 伊関 葉子
放電の始まっている枯木山 森村 文子
どんど焼見るべくおおぜいの暗転 渡辺 澄
冬の雑踏ありありとけもの道 松塚 大地
黒豆と愉快なこども大旦 小川トシ子
往くところ河豚がつるりと剥かれけり 鈴 カノン
冬の稲妻悠久がつまずきぬ 篠田 香子
薄氷の下は一途に昨日なり 中村 克子
憧憬熱くシリウスよりも深く 愛甲 知子
<白灯対談より>
逝く春やことばのかけら紡ぎいて 高橋登仕子
鳥交りオーケストラのように雲 伊達 サト
風景のその先あえか花の闇 佐藤由里枝
縄文の影引きずっている朧 大見 充子
花過ぎのまん中にいる白い猫 篠田 香子
はじめから一人ぼっちの花疲れ 笹本 陽子
人遠く桜しべ降る小雨降る 石井 昭子
みちのくへ続く青空牡丹の芽 辻 哲子
小さな部屋に大きな息子春暮るる 菅野 友己
剥落の仁王の足に散るさくら 土屋 光子
花菜畑雲を追いかけ風を呼び 小笠原良子
大空の今日の賑わい初つばめ 岩田セイ子
木の机木の椅子分校のさくら 相田 勝子
沈丁花運河より暮れはじめけり 若林 佐嗣
その先へ飛べしんがりの巣立鳥 上野やよひ
永遠に桜蕊降り童話館 楡井 正隆
飛花落花一人の午後の風の椅子 水野 禮子
初蝶来て目玉の光る仁王尊 斉藤 淑子
すこしずつ夢をこぼして梅の花 中村 直子
平成をつかずはなれず花筏 小林マリ子
賑やかな風の育ちてチューリップ 菊地 久子
躓いてかっと石蹴る浅き春 佐伯 光正
【山崎主宰の編集後記】
”生活でなく生命を、人生でなく人間を”と思っている。もちろん、生活を書くことによって生命に触れる。また、人生を書くことによって人間の深奥に迫る、ということもあるとは思うが、生活や人生の段階に止まっている限りは、生命や人間の真実は遂に書けないのではないか。
生命の重さ、人間の生きる意味、そんなものが多少でも俳句で書ければ、こんな素晴らしいことはない。 (Y)
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