響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2014年11月号より

響焰2014年11月号より

【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201411

うまい
熟睡して
            山崎 聰

終戦の日何かが見えて何もなく
おおかたは怒濤のいろに八月忌
夏の霧定住われら寂とあり
月の出やことばぐずぐず耳ひそひそ
烏瓜かの日の修羅も喝采も
甕に酒充ち月光のかなたあり
戦争と敬老の日の三輪車
纜は解かれ夏満月の真下
遠くあれば遠く待つなり夜の霧
うまい
熟睡して翼は海に月の酒

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2014年8月号より

我も冥き器のひとつ桜桃忌      石倉 夏生
新樹光真っ只中にいて悔し      栗原 節子
闇青き一村筍流しかな        山口 彩子
逃げ水を追っていただけきのうまで  松塚 大地
切株にうつらうつらと蛇の衣     中村 克子
花なずな泣き出すまでに少しの間   北島 洋子
サングラス躓いて風は鋭角      河津 智子
哲学のいちばんはじめ桜貝      篠田 香子
万緑の奥へ背鰭を立てて入る     西  博子
若葉風やや透明に歩むべし      紀の﨑 茜

<白灯対談より>

水牛の背骨八月十五日        楡井 正隆
赤べこが首振っている敗戦忌     岩田セイ子
存在の声を競いて雨後の蝉      大見 充子
来し方も未来もひとつ水中花     佐藤由里枝
いちまいの美しい夜籐の椅子     篠田 香子
夏休み大きな空が呼んでいる     笹本 陽子
空っぽの椅子に風くる九月くる    水野 禮子
陽に声や海の日の海ふくらんで    相田 勝子
法師蝉しきりに鳴いてふるさとへ   中村 直子
夕焼けて谷中の坂の迷い猫      多田せり奈
きっといるそれらしくいる青葉木菟  石井 昭子
老僧と二言三言木下闇        土屋 光子
分け入りて古道に苔の花の声     辻  哲子
噴水に裏も表もありにけり      小笠原良子
一村の溶けはじめたる溽暑かな    志鎌  史
産土をさがしておりぬ山椒魚     あざみ 精
歯車のひとつにならず時計草     小林マリ子
映像と共に過ぎ行く終戦忌      江口 ユキ

【山崎主宰の編集後記】

 つまるところ、ひとりをどう生きるか、ということになるのではないか。一家団欒の期間は意外と短い。子が成長すれば独立して離れ、やがて配偶者のどちらかが居なくなって、一人残される
 俳句の世界でも、長い間一緒に俳句を楽しみ語り合ってきた親しい仲間も、時の移ろいとともにつぎつぎと退場して、遂には自分一人になる。それからの長い一人の時をどう生きるか。そのときこそ、その人の本当の人間力が試されるのであろう。(Y)

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