【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201412
何が来る
山崎 聰
遺品に眼鏡月光の夏おわる
十五夜のあとに満月蜑の家
晩節は花野に眼鏡置くような
満月のそのさき淡海麴小屋
台風一過影あるものとして歩む
木犀のほか何と何灯るかな
今ここにこうしてわれら台風裡
金木犀銀木犀と昼の酒
台風二つそのあとに何が来る
風すでにけもののにおい神の留守
【山崎主宰の選】
<火炎集>響焔2014年9月号より
頭から酸化しつづけひきがえる 和田 浩一
少年暗し泰山木の花もまた 森村 文子
きらきらと三日遊んで鉄線花 米田 規子
梅雨満月最後のさいごまで真顔 川嶋 悦子
山の蟻由緒正しき肩書で 沖 みゆき
老人の懐中時計アマリリス 岩崎 令子
遠く来て大きなかたち夏の蝶 岩佐 久
海灯りいて八日目の油蝉 篠田 香子
決然と鍵穴ふたつ青嵐 西 博子
麝香揚羽それから母として永く 愛甲 知子
<白灯対談より>
爽籟や翼のほしき下り坂 中村 直子
まなかいに橋あるくらし波郷の忌 石井 昭子
風になり峠の道の猫じゃらし 岩田セイ子
路地の底抜けて青空新松子 水野 禮子
牛蒡引く丸い地球のてっぺんで 篠田 香子
秋の野に声分れみち戻り道 楡井 正隆
気だるげに消えそうに夏蹤いてくる 佐藤由里枝
音たてて猫が水のむ厄日かな 大見 充子
飲食をともに寂しみ韮の花 相田 勝子
昨日より今日より深く鶏頭花 小笠原良子
すすき原幽かに風の湧きはじむ 志鎌 史
この部屋のかすかな和音秋はじめ 笹本 陽子
いつからか闇のうごめく真葛原 あざみ 精
蜩の余韻むらさき風立ちぬ 辻 哲子
燕帰りて銀河行パスポート 多田せり奈
秋時雨無骨なるものときに愛し 小林マリ子
秋の雲たまご屋さんのオムライス 五十嵐美紗子
秋蝶や追われる風と追う風と 飯田 洋子
【山崎主宰の編集後記】
日本語は難しい。その日本語を、しかも韻文で書く俳句はもっと難しい。助詞一つで全く意味が変わってくるし、助動詞の活用を誤ると、妙な言葉遣いになって句意が正しく伝わらない。
俳句に携わる人はまず正しい日本語をしっかりと習得して欲しい。それには優れた文章をたくさん読むこと。本をよく読んでいる人は、文法など知らなくても正しい日本語が自然と身についている。日本語を粗末に扱ってはいけない。日本人なのだから。(Y)
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