【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201405
どんぐり山
山崎 聰
大雪のあとの紺碧船が出る
雪女ひとつはひとりの影曳いて
国憂うるときも雪降り窓あかり
どか雪にこんがらがっているふたり
これからを濃くして山の雪椿
雪やんでいのちの灯るごとく木々
ぐじゃぐじゃと生きぐじゃぐじゃの雪を踏む
遠嶺雪きょうの続きとして未来
寒三日月にんげんをいつやめようか
駒志津子さん
降る雪のどんぐり山に覚め卒寿
【山崎主宰の選】 <火炎集>響焔2014年2月号より
映りたきものを映して冬の沼 石倉 夏生
葱抜いて男の寓居灯したる 山口 彩子
木枯一号やくそくごとありて齟齬 廣谷 幸子
北窓ふさぐ天平のむかしから 芝崎 綾子
考えて改札通る十一月 沖 みゆき
偉そうに大きな鏡十一月 亀谷千鶴子
くさめして正しき骨の位置探す 金 松仙
秋日和巷にひとをあそばせて 青木 秀夫
異次元の隙間より音冬桜 内田紀久子
納豆汁羨望沁みてゆくところ 愛甲 知子
<白灯対談より>
人声の流るる真昼葦の角 中村 直子
初御空ベートーベンの第五番 岩田セイ子
どやどやと避難訓練草萌ゆる 石井 昭子
やさしくて夕日まみれの蜜柑山 大見 充子
みかんきんかん六法全書にルビ 篠田 香子
春の風ごつんと頭上通りけり 笹本 陽子
遠景にありふれた海立春後 佐藤由里枝
刃物屋の奥まで見えて寒の明け 相田 勝子
すっぽりと大都市雪夜シベリウス 辻 哲子
春遠くどこかさみしい薬指 小笠原良子
ものの芽や人皆修羅の仄明り 水野 禮子
餅を焼くあれこれあれと考えて 小林 伸子
一村をひと色にして山眠る 志鎌 史
人を恋うことんと落ちて春の闇 土屋 光子
影を踏むあそび二月のこどもたち 小林マリ子
滝凍てて観音さまの顕ち上る 多田せり奈
瞑想の達磨ではなく雪ごもり 原田 峯子
迷いいる大事と小事枇杷の花 浅見 幸子
【山崎主宰の編集後記】
文壇の芥川賞、直木賞とはすこし意味合いが違うが、俳句も二面性を持っている。芸術性と大衆性、一流性と一般性である。どちらが良い悪いということでなく、云ってみれば、芸術、文芸すべてに共通する宿命であろう。
結社はその両方を呑み込まなければ成り立たない。主宰の意志、志向はそれとして、結社を運営するためには、そのどちらの作者も抱え込んで、それぞれに所を得させることが求められる。そこに結社運営の難しさがあり、主宰の指導者としての資質が問われるところでもある。 (Y)】
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