【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201406
サハリン
山崎 聰
省略のそのさき辛夷沈丁花
遠く思えば遠くあるなり鷹女の忌
尾鰭から憂いはじまり花の闇
放埓で無口で美男四月馬鹿
仰向けに流れて海へ花筏
春昼のさびしい時間刃物研ぎ
さくら散りおへそのまわりがむず痒い
少年に大きなのぞみ四月沸く
恋遠しサハリン遠し遅桜
和知喜八先生
いまもなお春のまんまる月と湖
【山崎主宰の選】 <火炎集>響焔2014年3月号より
狐火のしんがりは泥酔の父 栗原 節子
片足を雪に取られて存在す 小林 実
いちょう黄葉寧楽の都を隠しけり 芝崎 綾子
冬に逝く本の頁を繰るように 川嶋 悦子
何よりも眼鏡が大事去年今年 鈴 カノン
こころまた家出しておりかりんの実 和田 璋子
ややあって扉が閉まり冬ざくら 田畑 京子
十二月銀座に近く黄昏れて 岩佐 久
ゆきだるま迷子のような顔をして 秋山ひろ子
山茶花一列校庭は忘れもの 篠田 香子
<白灯対談より>
カピバラと半分ずつの春日向 土屋 光子
もろもろの紐があつまり弥生尽 中村 直子
春の風すこしさびしく象の鼻 岩田セイ子
威風堂々花冷えの江戸の蔵 石井 昭子
永遠のくるりくるりと春の水 紀の﨑 茜
菜の花をたどりてゆけば遠き日々 小笠原良子
海底を匍匐前進して四月 篠田 香子
音たてず夢にも触れず白い蝶 大見 充子
まんなかにフランス人形ひなまつり 佐藤由里枝
また咲いてまた散らばってわが桜 笹本 陽子
紋黄蝶アンモナイトの渦を発つ 相田 勝子
啓蟄や出口いくつも地下の街 辻 哲子
ゆゆしきは深川あたり梅真白 小林 伸子
地の根っこ人の根っこに春の雨 水野 禮子
春がすみ絶滅危惧種の一人なり 志鎌 史
読みさしの「アンネの日記」四温かな 多田せり奈
嗚呼という声したようで落椿 あざみ 精
雲の上から老いはおとずれ花大根 小林マリ子
ミモザ咲く今日のこの道明るくて 土田美穂子
【山崎主宰の編集後記】
私達が普通目にする文章(俳句や短歌も)は、漢字仮名混り文である。考えてみると、これは実に優れた先人の知恵だと思う。
漢字は表意文字でそれ自身に意味がある。だから漢字漢語は、見た瞬間に意味が伝わる。表音文字である仮名は字自体には意味は無い。ひとかたまりの言葉になってはじめて意味を持つ。しかし仮名文には独特のやさしさと匂いがある。
短い俳句の場合、同じ言葉を漢字で書くか仮名で書くかで読者に与える印象は大きく違う。その選択は掛って作者に委ねられているだけに、漢字と仮名の微妙な使い分けに意を用いたい。 (Y)】
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