響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2014年7月号より

響焰2014年7月号より

【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201407


ニーチェ以後

              山崎 聰

何かが墜ちる春の淡雪のあと
子猫にもあるあしうらの黒いところ
生死(しょうじ)なおおぼろのむこう島泊り
音消せば三百六十度春夜
ぼんやりと亀が鳴くから遠江
いまもなおほのあかくあり春の夢
シネラリア人のうしろを風吹いて
にっぽんのうすぐらいところから蝶
ニーチェ以後厨に充ちて春の闇
葉桜と羅漢と町じゅうのこども

 

【山崎主宰の選】 <火炎集>響焔2014年4月号より


マスクして詩人の瞳誰ももつ     川嶋 隆史
新春の雷門で囁きぬ   
      小林  実
寒気団居座り深川飯屋に灯      廣谷 幸子
かちかち山金時山も冬枯れて     川嶋 悦子
風の笛初夢はいつもまぼろし     沖 みゆき
冬満月障子に猫の覗き穴       和田 璋子
のんびりと叱られていて三日過ぐ   秋山ひろ子
まっすぐに歩くすなわち恵方道    河津 智子
初夢の中うみうしと長話       内田  厚
一月のおわりをのぞき万華鏡     山村 則子

<白灯対談より>

みちのくの連山潤び武者絵凧     岩田セイ子
地下鉄を出て春雷に打たれけり    佐藤由里枝
花寂びてうつしごころの戻りけり   大見 充子
幾すじも水光りゆく弥生尽      中村 直子
桜貝ときどき泣いて赤ん坊      笹本 陽子
春昼をとんと拡げて象の耳      篠田 香子
永遠の中をトボトボ芽吹く日々    紀の﨑 茜
見えかくれしてチューリップの鼓笛隊 土屋 光子
花ミモザ光の中から乳母車      小笠原良子
春深く並びて蔵の仄明り       志鎌  史
海までの風のあとさき飛花落花    水野 禮子
結論へすこし動いて花筏       相田 勝子
桜咲く多事多難にもかかわらず    辻  哲子
ほんのすこし初心にもどり野水仙   多田せり奈
リラの雨十字の墓へゆるい坂     石井 昭子
地球儀のくるりとまわる蝶の昼    小林マリ子
入口は開いているなり末黒の野    楡井 正隆
横丁を曲がると麩菓子春の昼     あざみ 精

【山崎主宰の編集後記】

 誤解を怖れずに、ごくおおざっぱに云えば自然科学と人文科学の折り合いをどうつけるかが俳句なのではないかと思う。
  歳時記の季語は、生活や行事など一部を除いて、ほとんどが自然科学、もっとひらたく云えば”理科”である。そこに感性や言語感覚といった人文科学的要素をどう滑り込ませるか、そのかね合いが一句の味わいを決める。
 そんなことを考えながら俳句を作ってみるのも、ときには面白いかも知れぬ。 (Y)

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