響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2014年8月号より

響焰2014年8月号より

【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201408

 翔けるべし
                                                                    山崎 聰
狼のように走りぬつちふる日
憲法の日塀の穴から顔のぞく
翼なくことばなくこどもの日の大人
八十八夜人体とうに濡れている
泣きたくば泣くべし青野翔けるべし
花樗病棟裏の夜と昼
走り梅雨にっぽんすでにうすあおく
うかうかと人の死に遇う青葉潮
緑陰のさしたることもなき二人
雲のよう放蕩のよう牛蛙

 

【山崎主宰の選】 <火炎集>響焔2014年5月号より


一瀑布過ぎていそがぬ雪解川     川嶋 隆史
今はただ炭焼竈として残る
      栗原 節子
如月の遠きものとして少年      森村 文子
麦踏みのつづきの父の遠さかな    渡辺  澄
寒明ける中学生に挟まれて      沖 みゆき
春泥を跳んで人間嫌いかな      中村 克子
福は内小さき声で鬼も入れ      田畑 京子
寒椿ときどきこころ熱くして     金  松仙
寒月光はらりひらりと女文字     君塚 惠子
立春寒波団欒の外にいて       山口 典子

<白灯対談より>

逝く春や終着駅は風のむこう     佐藤由里枝
むらさきの特急列車麦の秋      岩田セイ子
春の宵昭和へ曲がるシネマ街     石井 昭子
帰ろうか桑の実すでに眠りけり    笹本 陽子
太陽の軌道をはずれ夏休み      篠田 香子
くやしかり濡れた葉裏のなみくじり  大見 充子
やわらかに言葉を重ね夜の新樹    水野 禮子
八十八夜木の家に住み木の香り    相田 勝子
憲法記念日ピカソの女見ておりぬ   中村 直子
仁王門のあたりへ跳んで雨蛙     土屋 光子
ゆっくりと列車の尾灯夜の新樹    楡井 正隆
戦争と平和変わらぬ五月富士     辻  哲子
真実は春の青空大都会        志鎌  史
青葉寒象のおなかの皴の数      小林マリ子
太陽の五月へ青い鳥放つ       小笠原良子
望郷や堰をあふるる春の水      多田せり奈
葉桜の径くぐり抜け山頭火      土田美穂子 
細胞にたましい宿り春うらら     浅見 幸子
仰ぐのはいつも夕暮れ桐の花     飯田 洋子

【山崎主宰の編集後記】

 人が生きてゆく上でいちばん大事なものを一つだけ挙げよと、云われれば、それは”想像力”ではないかと思う。対人間の摩擦、失敗、さらには犯罪なども、ちょっと想像力を働かせて行動すれば避けられたのではないか、と思われるケースが多々ある。
翻って俳句の世界でも、想像力はもっとも重要である。書き手と読み手の想像力の鬩ぎ合いが俳句の面白さだ、と云っては言い過ぎだろうか。いわゆる吟行なども、つまりは想像力を膨らませるためにある、とさえ思うのだが。(Y)

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