響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2014年9月号より

響焰2014年9月号より

【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201409

 魚虫ほか
                                                                    山崎 聰
緑陰をはなれてからの生者死者
平穏のときにはゆらぎ麦の秋
大川にいくつかの橋夏至の雨
まっすぐに大きな靴が来て溽暑
天上はいまだあかるく蚯蚓の死
戦前か守宮の五指がうごかない
天空遠く人にも遠く夏の蝶
酒房あり愉し山の蟻疎まし
草木鳥獣魚虫ほか夏休み
   悼・伊藤君江さん
真顔いまやさしき笑顔青野原

【山崎主宰の選】 <火炎集>響焔2014年6月号より


三月の耳ふたつ飛ぶ淡海かな     伊藤 君江
三月の膨張みたり越後にて      小林  実
ふと生臭く暗がりの沈丁花      川嶋 悦子
遠い日の手紙のように春の雪     中村 克子
雀来る冷たい景色の真ん中に     亀谷千鶴子
春昼やみんなどこかにかくれんぼ   田畑 京子
羽は皆水辺に集い春の月       金  松山
ゆき降れり遠いむかしの火のいろで  秋山ひろ子
若布汁宵越しの金すこし持つ     愛甲 知子
揚げ雲雀みちのく風の吹くばかり   高橋登仕子

<白灯対談より>

しばらくは一茶の影をかたつむり   楡井 正隆
砲台のあとの砂山青葉潮  
     水野 禮子
空よりも水の明るき夏はじめ     岩田セイ子

川沿いをまわって帰ろ風五月     中村 直子
夢あふれいて六月の縄ばしご     篠田 香子
真夜中も朝もやさしく水蜜桃     笹本 陽子
尺蠖の何がなんでも急ぎけり   
  佐藤由里枝
斎場の出口に子供沙羅の花      土屋 光子
ふたりなら青水無月の渡し舟 
    石井 昭子
蛇は穴をさびしい本の並びて  
   大見 充子
戦前とも夕焼け雲に黒い点  
    相田 勝子
熟れごろのメロンの網目町暮らし   辻  哲子
萱草の花もうこれ以上走れない    小林マリ子
紫陽花の盛りの色のさみしかり
    志鎌  史
アマリリスやさしくされてなお不安  小笠原良子
シャボン玉もう消えそうに泣きそうに 浅見 幸子
どこからかムンクの叫び座禅草    多田せり奈
雑踏に混じることなく白日傘     中野 充子

【山崎主宰の編集後記】

 俳句は人生と似ている。長く生きていて特に良いことがあるわけではないが、ごくたまに、生きていて良かったと思えるようなことに巡り合うことがある。そんな出会いのために、人は営々と毎日を生きる。
俳句も頑張ったからといって良い句ができるわけではないが、あるとき全く偶然にオヤと思うような良い句が授かることがある。そしてそれは、日頃努力していないと、そういう幸運には巡り合えないのである。(
Y)

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