響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2015年10月号より

響焰2015年10月号より

【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201510

俺のうしろ            山崎 聰

遠く来て遠く帰りぬ日の盛り
老人と老人無言青時雨
来るな来るなと言っても八月は来る
みんないて誰かがいない夏の空
沈黙の一瞬法師蝉還る
炎天の近くて遠きものばかり
木という木風という風八月忌
夏の月俺のうしろは寂しかろ
退屈な二人のかたち八月尽
慟哭のそのときまでを秋の蝉

 

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2015年7月号より

ひとりずつおもう大きな春の月     栗原 節子
汐まねき悪童はいつもまっすぐ     森村 文子
清明や足音はわが家を過ぎて      渡辺  澄
おおよそを眠りときどき花水木     加藤千恵子
頑に莟を並べ紫木蓮          新川 敏夫
紫木蓮途中下車できないものか     田畑 京子
春の星百年先もみそっかす       金  松仙
大八洲八十八夜の句読点        岩佐  久
春の風三半規管から他人        篠田 香子
貝寄風や戦をやめて哭かないで     愛甲 知子

<白灯対談より>

瀬戸内の蛸を煮ており日の盛り     佐藤由里枝
かたつむり山の夕日へ向かいけり    大見 充子
すぐそこにいつも太陽夏休み      石井 昭子
浮世絵の昭和のいろの丸うちわ     小林マリ子
サングラスはずし小さな旅終わる    笹尾 京子
ひとつふたつみっつうかうか夏の果て  志鎌  史
涼しさは砕ける前の波の音       笹本 陽子
あんぐりと河馬の歯みがき風青し    多田せり奈
やじろべえの優柔不断熱帯夜      相田 勝子
あの夏のあの一日を千羽鶴       酒井眞知子
くろぐろと昼の運河を夏の蝶      川口 史江
白南風や哲学の道ひとりの道      浅見 幸子
歳月を真っ赤に染めてカンナ咲く    土田美穂子
勤勉と狂気のはざま蟻の列       蓮尾 碩才
麦の秋二峰筑波の座りよし       菊地 久子
梅雨深しショパンの音のなかにいて   辻  哲子

 

【山崎主宰の編集後記】

 人は二回死ぬ、と云われる。一回目は文字通り肉体が滅びたとき、そして二回目は、その人を知った人がこの世に誰も居なくなったとき、という。
 肉体の死は常識的にもよくわかるが、もっと痛切なのは、自分を知った人が誰も居なくなることである。狂おしいほど恐ろしいと思う。
 先師和知喜八先生が逝って、この10月で11年になる。響焰の同人でも先生を知っている人がずいぶんと少なくなった。時代の移り変りとはいえ、淋しいことである。   (Y)

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