響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2015年11月号より

響焰2015年11月号より

【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201511

おわりのはじまり            山崎 聰

きょうだけは溺愛されて兜虫
雲の峰目鼻崩れて忘れらる
一瞬の齟齬そのあとの蝉の声
逝き遅れしか八月のあぶらぜみ
残り蚊とたたかう力あるにはある
耳やわらかく九月はじめの第一歩
滅びつつ滅ぶ倭の国蚯蚓鳴く
地震津波竜巻出水生きていま
おわりのはじまりか列島霧深し
手を振って別れてきしが今朝の秋

 

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2015年8月号より

遠景の六月ほのぼのとありぬ      栗原 節子
海に帰れば端正なるあめふらし     森村 文子
ぎしぎしの花戦争に来て死せり     渡辺  澄
諸葛菜退屈さうな象の耳        小林 一子
触れれば凹み八十八夜の満月      川嶋 悦子
みどりの日近景漠としてたしか     沖 みゆき
五月雨尻尾のような足を組む      鈴 カノン
夜の橋からんからんと裸なり      紀の﨑 茜
おぼろ月家出するには何か足らぬ    和田 璋子
潮ぬれて魚も濡れて五月の朝      秋山ひろ子

<白灯対談より>

人間の欲を削って氷水         笹尾 京子
夏は水玉人に悪玉コレステロール    石井 昭子
こころ定まり八月の赤い月       小林マリ子
がさごそと夏の思い出離岸流      大見 充子
みちのくの英雄伝説夏の雲       佐藤由里枝
纜を探しあぐねて昼寝覚        相田 勝子
音もなく老いゆく力大西日       笹本 陽子
七十年七十二億の夏の空        多田せり奈
空蝉や貴人の衣美術館         志鎌  史
少年は釣り蝙蝠の赤き夕        土田美穂子
あらん限りの声張り上げて秋の蝉    波多野真代
川満ちて合歓の花咲く散歩道      酒井眞知子
グレゴリオ聖歌の流れ明易し      辻  哲子
幾億の糸のかたまり蝉時雨       大竹 妙子
夏深し東京メトロ湯島駅        飯田 洋子
海の日や静かに暮れる丸の内      蓮尾 碩才

 

【山崎主宰の編集後記】

 俳句はつまるところ、自分との闘いである。発表するからには、相手に伝わって欲しいと思うのは人情だが、それよりも”己に伝わる(納得する)か”はもっと大切であろう。
 だいたい自分が納得していないものを、他人が理解する道理がない。場を盛り上げるために選をしたり、コンクールで優劣を競ったりするが、そのような一過性の評価などはどうでもよいこと。自分の魂とどう切り結んだか、どう闘ったかこそが問われなければならない。他人の評価はあくまでも単なる参考と心得たい。
 ”高点句に秀句なし”という昔からの箴言もある。   (Y)

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