【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201512
荒野 山崎 聰
鰯雲バビロンいまも青く濃く
螻蛄鳴くと山のかなしみ灯のかなしみ
秋の七草横顔ばかりにてさびし
そして荒野月すこしだけ欠けている
男来て一気に崩れ秋の闇
豊葦原瑞穂の国の運動会
恙なきか遠山すでに雪来しか
秋ふかく山にいて海のことおもう
かつてここ鷹匠の里陽が昇る
純粋はそぞろに寒く喜八の忌
【山崎主宰の選】
<火炎集>響焔2015年9月号より
舟で来て舟でかえりぬ花樗 森村 文子
草笛を吹きしことなく故郷なく 内田 秀子
蛍狩夜空がおちてくるまえに 渡辺 澄
春の泥男ぎらりと生還す 鈴 カノン
疑問符の形ほどけず蝸牛 紀の﨑 茜
庭仕事せよと圧力梅雨間近 米田 透
水無月の紫の中歩きけり 岩崎 令子
もろもろの海を束ねて南風 金 松仙
少年の大志のような五月の木 田部井知子
青嵐一角獣の鼻の先 鈴木 瑩子
<白灯対談より>
一葉落つ白い運河に白い舟 石井 昭子
火の玉のような八月海凪ぎて 小林マリ子
くらがりの曼珠沙華なら火の国へ 大見 充子
籐寝椅子半分は夜になっている 松村 五月
釣竿の大きくたわみ秋日和 佐藤由里枝
休暇明けでこぼこといる子供たち 笹尾 京子
ふる里は日毎に遠く月見草 志鎌 史
薄紅葉だれかが居てもいなくても 笹本 陽子
獺祭忌なおふかぶかと九月の椅子 多田せり奈
たまごかけごはん二人の二百十日 相田 勝子
圧倒のボーイソプラノ星飛べり 波多野真代
月の影町を静かに休ませて 小澤 裕子
半球のいずこを通る秋燕 酒井眞知子
雨の日は雨の香となり金木犀 浅見 幸子
列島は秋の咆哮ただ眠る 大竹 妙子
不可解は不可解のまま居待月 岩政 耀男
【山崎主宰の編集後記】
相撲や剣道、柔道といった一対一の格闘技は、少しでも無駄な動きがあると負けるという。特に積極的なミスがなくても、ほんのちょっとした無駄な動きが即負けにつながるというから怖い。
翻って俳句のような極端に短い詩の場合も無駄な言葉が命取りになることは経験が示している。重複する言葉やもの云い、あるいは意味のない言葉は、一句に緩みをもたらし凡作に終る。これを防ぐには、日本語に習熟することはもちろん、本をたくさん読むなど不断の訓練が欠かせない。 (Y)
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