【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201502
まほろま
山崎 聰
まほらまは甍の果ての稲穂波
網を干す一切は黄落の中
火男もいる十一月のカレンダー
みちのくは馥郁とあり鷹渡る
ときどき思う冬虹のうしろがわ
影すこし尖りて寒し厨猫
海すでに空につながり神楽笛
大空の藍色深み甲斐も冬
月山のふもと雪降り雪女
門を出てまっすぐ行くと十二月
【山崎主宰の選】
<火炎集>響焔2014年11月号より
不意の雪一書を得たる便りして 川嶋 隆史
こみあげてこみあげてきて滴れり 石倉 夏生
水中花からみつくものなにもなく 森村 文子
台風の端に触れいてみんな模糊 山口 彩子
蝉の木ともう一本の名も無い木 加藤千恵子
虫にならないかと誘われてかなかな 中村 克子
星月夜てのひら揺るぎなく寡黙 金 松仙
雲の峰さかなやが来て父の家 篠田 香子
土の香のじゃがたらごつんこっつんこ 青木 秀夫
ひとごとのように腑抜けて扇風機 愛甲 知子
<白灯対談より>
人の世にサインコサイン神の留守 石井 昭子
ゆっくりと犬が口開く榾明り 大見 充子
冬銀河影絵のように又三郎 佐藤由里枝
踏みしめて階段上がる文化の日 志鎌 史
なつかしき言葉の並ぶ小六月 笹本 陽子
ぎこちなき別れの言葉石蕗の花 相田 勝子
陽をふふむ音符あまたの吾亦紅 多田せり奈
夕紅葉二人乗り自転車のふたり 小笠原良子
夕闇に小林多喜二冬怒涛 辻 哲子
今にして思う椅の実の生家 小林マリ子
深秋のひとつの景を清州橋 飯田 洋子
千の眼と千の絆をピラカンサ あざみ 精
喪服着て小さくあくび小春の日 江口 ユキ
ラストシーンのあと眠り冬の海 大竹 妙子
やさしさの漂っている大花野 酒井眞知子
日だまりの出口にて逢い赤とんぼ 小澤 裕子
膨らんだり萎んだりして秋が逝く 川口 史江
いつの日もここち良い距離六地蔵 中野 充子
【山崎主宰の編集後記】
自由ほど不自由なものはない。俳句が難しいのは、何をどう詠っても自由だからである。何をやってもいい俳句には、当然教科書などない。だから俳句には正解はない。あれも真、これも真なのである。
ひたすらに自分を信じ、自分がこうと思う道をまっすぐに突き進む。他人の意見ほどあてにならぬものはない。長く苦しい自分との闘い。俳句の道とはそういうものである。(Y)
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