【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201505
三・一一 山崎 聰
どどどどどっと狼たちの雪夜
男来るシベリアからは凄い寒波
どの橋もきれいに灯り多喜二の忌
深雪晴閂ひとつ外されて
刃物屋に少年二人雪が降る
影うごきあと人うごく忘れ雪
立春満月ぞろぞろとけものたち
灯されて三月三日の玉子焼き
三・一一快晴土筆まだ出ぬか
一茶子規然してわれら涅槃雪
【山崎主宰の選】
<火炎集>響焔2015年2月号より
身の内の蜜減つてをり日向ぼこ 石倉 夏生
赤紙のごときが飛んで運動会 小林 実
あの犬は戻れたろうか山眠る 渡辺 澄
秋落暉地平はふところのように 山口 彩子
残る虫とんとんからりまわりくる 鈴 カノン
大奥の頽廃匂う菊人形 伊達 甲女
晩秋のみぎて左手くすり指 河村 芳子
風葬の斧ふりかざし枯蟷螂 西 博子
三日月に納得をして石を蹴る 山口美恵子
みかん山遠き日の硝子のむこう 高橋登仕子
<白灯対談より>
天と地のあわい不確か春の雷 小林マリ子
鬼やらい豆の数ほど人の闇 佐藤由里枝
老いながら夢追いながら梅の花 志鎌 史
深雪晴しかと風の子昭和の子 石井 昭子
引出しに国旗たたまれ建国の日 笹尾 京子
春昼の風は木綿の手ざわりで 大見 充子
冴返るあるにはありて耳ふたつ 相田 勝子
うぶすなの白馬の飛翔風光る 多田せり奈
おぼろの夜近くにありて遠くあり 笹本 陽子
ポケットのなかのぬくもり冬銀河 あざみ 精
星冴えてチェロの余韻の中にいる 辻 哲子
シーサーの視線に遠く春の海 酒井眞知子
美しいものだけを見て霧の夜 土田美穂子
つつがなくグランドの端犬ふぐり 五十嵐美紗子
浅き春日溜り広げ群雀 江口 ユキ
まん中に梅の香りを女人たち 中野 充子
桜坂坂の上から春の月 飯田 洋子
つじつまの合わぬ夢なり春の昼 川口 史江
【山崎主宰の編集後記】
当り前のことだが、俳句は日本語で書く。日本語を離れて俳句はない。外国人がその国の言葉で書くいわゆるハイクは、短詩ではあっても、厳密には俳句とは云い難い。
日本語は私達日本人にとっては母語である。だが日本語は、世界でも難しい部類に属する言語だと云われている。その難しい日本語で、世界一短い俳句を書く。これほど難しいことはない。俳句作者は、まず自分の日本語を磨いて欲しい。 (Y)
コメントを残す