【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201506
映画のように 山崎 聰
北窓開く戦争が大きく見えて
星を仰いで春分の日のイスラム
二月逝き三月さくら海に満つ
水のごときもの花の日を熟睡(うまい)して
柳芽吹きかすかに新刊書の匂い
花の雨映画のように傘さして
はじめから頽廃のいろ春帽子
もののけのごとくに跳べり春の二人
今こそ哭け桜蕊降る下の軀
水行十里あとの陸行昭和の日
【山崎主宰の選】
<火炎集>響焔2015年3月号より
蒸発を考えてゐる返り花 石倉 夏生
寒晴の大東京の静電気 栗原 節子
赦さるるごとく純白冬そうび 森村 文子
暮れなずむ鎌倉がぶりがぶり冬 小林 一子
歌舞伎町あたりで果てし冬満月 加藤千恵子
親鸞の奥に法然寒月光 鈴 カノン
男でも女でもない十二月 北島 洋子
風の笛どんぐりはつちのくぼみに 岩崎 令子
紅葉かつ散るそれからは人として 篠田 香子
暮早し襁褓の売場うろうろす 佐藤 鱓
<白灯対談より>
アナログに生きて都会の青蛙 大見 充子
花菜紐いっぽんのあそびして 石井 昭子
言の葉にあやうさひそみ花の冷 志鎌 史
その角を曲がれば他国桃の花 佐藤由里枝
いっぽんずつ十指の開く花の頃 笹本 陽子
揺り椅子に父さん眠り春の昼 小笠原良子
鍵に鈴ポケットの中あたたかく 相田 勝子
春夕焼泣くだけ泣いてとんからり 小林マリ子
飛び立ちて大鷲空を摑みけり 多田せり奈
亀鳴けり模索の中の一行詩 辻 哲子
春日傘みんなおんなの顔をして 笹尾 京子
海眠る菜の花畑に星眠る 江口 ユキ
東京の端で暮して猫柳 森田 成子
ふらここのそこに父いて風生まる 酒井眞知子
いつの世もどの子も描くチューリップ 中野 充子
奥能登の真白き雲や菜の花忌 川口 史江
ボール打ちボールの先の犬ふぐり 五十嵐美紗子
【山崎主宰の編集後記】
”生涯現役”を願っている。もちろん、人間先のことはわからないが、脳が正常に働いている限り、自ら途中退場はしないつもりである。
とは云うものの、そんなうまい具合にゆくのかどうか、必ずしも確信はない。ただ自分の覚悟として、自ら筆を折ることはすまいと思っているだけである。
だから私の俳句を見なくなったら、そのときはこの世にいないものと思って欲しい
と、これは昭和の男の、昭和の日の戯言である。
(Y)
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