【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201507
能因 山崎 聰
葦牙や少年の父長征す
能因は西へ桜咲き桜散る
押す波も押される波も夏の波
みちのくの昏々とありシネラリア
黄金週間神々の席ここにはなく
凋落は天から不意にしゃぼん玉
隠しごとこれきりですかかたつむり
昭和遠く五月雨を行くハンチング
八十八夜だれにともなくわらう
緑蔭に曝す門外不出の書
【山崎主宰の選】
<火炎集>響焔2015年4月号より
寒月光とは金粉か銀粉か 石倉 夏生
冬シャツの糸屑あおぞらに放る 内田 秀子
一瞬が沢山あって冬花火 小林 実
思い出と呼ばれて久し雪降れり 渡辺 澄
いちにちを微塵に砕き空っ風 奈良岡晶子
嚏するどこかで星が死んだから 紀の﨑 茜
駅に着く度ストンと冷えてゆく地球 金 松仙
風の笛どんぐりはつちのくぼみに 河津 智子
薺打つ唐土に遠くありてなお 山口 典子
空っ風ひとつの影として歩く 高橋登仕子
<白灯対談より>
旧姓で話しかけられ花の下 笹尾 京子
ふるさとは海市の向こう船で行く 佐藤由里枝
星こぼれ磯巾着はすこし不精 大見 充子
春深む人ほの青き影を曳き 石井 昭子
平成を躓いており花筏 小林マリ子
風光る新設校に日章旗 志鎌 史
せっかちとこの呑気さが春の風 笹本 陽子
あの日からおどみゃおろろん春の海 多田せり奈
七色に町を映してしゃぼん玉 小笠原良子
よみがえる賢治の言葉蜆汁 辻 哲子
桜吹雪ゆっくり進む往診車 酒井眞知子
じぐざぐに海山を越え春の声 相田 勝子
精神のどこか空っぽ初桜 江口 ユキ
さくらさくら誰かが風を呼んでいる あざみ 精
青い瞳の人形のよう春の暮 大竹 妙子
とっぷりと昭和のメロディーみどりの日 川口 史江
ただ行きてただ帰りくる蟻の列 岩政 輝男
【山崎主宰の編集後記】
俳句を幾つか見ても、その人の本当の実力はわからないが、句会などでの選句を一度見ればその人の力がすぐわかる。自分のレベル以上の句は採れないからだ。選句は嘘をつかない。
世の中に百点の句はない。と同時に零点の句もない。どの句にも良い所と悪い所がある。欠点が気になる人は採らない。逆に良い点を評価する人は少々の瑕には目をつぶって採る。だから選句を見れば、その人の俳句についての考え方、つまりレベルがたちどころにわかる。選句は選者の俳句観、俳句姿勢の反映なのである。選句は大切である。 (Y)
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