響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2015年9月号より

響焰2015年9月号より

【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201509

ほつりほつり            山崎 聰

加齢いよいよリラ冷えのこの明るさ
みちのくはもはや日暮ぞひきがえる
余生なお熱きいろいろさくらんぼ
動脈は波打ってきょうも梅雨空
炎天を来る影持たぬ人おおぜい
動詞助詞助動詞夏の雨が降る
茫としておれば呆とし日の盛り
八月がなんにも言わぬ父と来る
なお生きて遠く夏野をほつりほつり
八月のやっぱり今日はさびしい日

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2015年6月号より

白鳥の睡り乳母車に眠る        和田 浩一
几帳面すぎはしないか冬木の芽     栗原 節子
本箱に亀鳴くことを誰も知らず     渡辺  澄
沈丁花少年闇に蹲る          川嶋 悦子
鼻はるばると判子を押しに春一番    紀の﨑 茜
大切なものまで隠し春霞        亀谷千鶴子
桜貝溺愛されていたような       小川トシ子
三月の光がひかり押してゆく      西  博子
遠足の一団と降り海の駅        田部井知子
とむらいに行かず見ている牡丹雪    佐藤  鱓

<白灯対談より>

早苗月一本道のこころざし       多田せり奈
海へ向く千のひまわり千の闇      石井 昭子
梅雨の街人間だけが傘さして      笹尾 京子
青葉風立像いまも昭和見て       小林マリ子
可惜夜の待つ身を細く月見草      大見 充子
始祖鳥の生まれるころか五月闇     佐藤由里枝
太宰の忌まだこの国の若き頃      相田 勝子
はつ夏の中央アルプス駒ヶ岳      志鎌  史
ぐずぐずと眠りの時間夏はじめ     笹本 陽子
夏兆す埴輪の口とふたつの眼      浅見 幸子
草原にニケの両翼青嵐         酒井眞知子
赤人と手兒奈の里の立葵        辻  哲子
東京の闇をあかるく花十薬       中野 充子
走り梅雨花束と乗る昇降機       飯田 洋子
六月やひとりひとりに銀の雨      森田 成子
合歓の花風あるときは語らいて     土田美穂子
雨の薔薇アントワネットの舞踏会    波多野真代
絵扇子を開けば水の匂いして      川口 史江
信濃から雨の越後へ山法師       蓮尾 碩才

 

【山崎主宰の編集後記】

 ”完璧が達せられるのは、付け加えるものが何もなくなったときではなくて、削るものが何もなくなったときである”とは、フランスの飛行家で作家のサンテグジュベリである。
 私達の俳句に完璧など望むべくもないが、それでもこの箴言はそのまま当てはまる。俳句を推敲するとき、ともすれば何かを加えることに熱心である。そうではなく、まずぎりぎりまで削って、そのあとで削ったところをどう補うかを考える。そうすれば私達の俳句も随分と様変わりするのではないか。 (Y)

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