【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201601
人のくらし 山崎 聰
蛇穴に入りたるあとの人のくらし
綿虫のよく飛ぶ日なり喜八の忌
海抜二百米の空っ風
木枯一号わあんわあんとけもの
冬までのしばらくを濃き遠山河
陽の底で冬菜を育て小さくいる
今も極道白山茶花咲いて散り
生死あり木枯一号のゆくえ
晩節は柞の山の奥の奥
月山はいまだ遠くて吊し柿
【山崎主宰の選】
<火炎集>響焔2015年10月号より
柩出てゆっくり曲がる炎天下 栗原 節子
石段の暗がりで買うきりぎりす 森村 文子
細き壜危うく立ちて芙美子の忌 内田 秀子
しばらくは生者の側にいて円座 小林 実
もの云わぬ一頭として黒揚羽 加藤千恵子
水に流して水流す夏夕べ 沖 みゆき
脳髄に昔の蟻が這うような 紀の﨑 茜
蓮の花うつらうつらと二千年 金 松仙
大夕焼燠のようなる村一つ 君塚 惠子
魂も連れて寄せくる土用風 鈴木 瑩子
<白灯対談より>
橋渡る今年最後の秋の風 笹尾 京子
対岸の黄なら明るく泡立草 土田美穂子
十月や見て考えてそして笑う 笹本 陽子
うぶすなの風のかがり火稲穂波 多田せり奈
同じ色同じ思いを山の柿 相田 勝子
旅の雨長引く気配こぼれ萩 蓮尾 碩才
青空はコスモスのため明日のため 松村 五月
秋分の日本気で泣いて赤ん坊 志鎌 史
千畳敷カールざわざわ秋を踏む 飯田 洋子
精神の闇を灯して銀木犀 酒井眞知子
とろとろと魂つれて秋の蝶 大竹 妙子
黙然と幾多郎読みて日短 岩政 耀男
右は街左は海へ秋日和 江口 ユキ
ひとつ得てひとつは捨てて冬支度 川口 史江
自転車でいつもの小径金木犀 小澤 裕子
枯葉舞う曠野のかなたラフマニノフ 辻 哲子
【山崎主宰の編集後記】
最近読んだ詩に<未整理の過去と手探りの未来との間に、点描でしか描けない現在がある>というのがあった。(伊藤伸明「とつとつな音」)
昨日はもう過去、今日も明日になれば過去で、まさに未整理なままどんどん過ぎ去ってゆく。そして、未来は何も見えない。過去と未来をつなぐ現在はと云えば、ともかくもただ生きて、おろおろと何かをしているだけである。
私達の俳句も、未整理の過去を引きずりながら、見えない未来を手探りしてあがいている現在を書いているのだろう。 (Y)
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