【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201602
かくて冬 山崎 聰
十二月たちまち失せて持ち時間
極月が荒野を凜と来たるかな
通り抜けたる北風の先が海
十二月あしたの風のこえを聞く
鬼火ともみちのくははるかに暮れて
吹く風のひとりに寒く塞の神
新十二月ごつごつと父母祖父母
もとよりの言語道断空っ風
十二月八日の朝の地鎮祭
葡萄酒と壺の岩塩かくて冬
【山崎主宰の選】
<火炎集>響焔2015年11月号より
八月の空はいつでも青い一枚 森村 文子
桃熟すいずれも還る途中なり 小林 実
終戦忌左脳に残るかすり傷 田中 賢治
法師蝉フォッサマグナに関わりなく 廣谷 幸子
百日紅まひるの闇に息をして 米田 規子
サングラス外してからの別の道 中村 克子
白い脚二本夾竹桃の陰 伊達 甲女
手も足もみんなはずして夏休み 篠田 香子
人体の水に溺るる熱帯夜 君塚 惠子
八月の涙はあおく青のまま 鈴木 瑩子
<白灯対談より>
枯れ菊のまるい時間を束ねけり 多田せり奈
お互いを見て見ないふり菊人形 笹尾 京子
蓑虫の憂鬱こんなに広い空 松村 五月
孤独ってこんなものなり木守柿 笹本 陽子
ピラカンサ戯曲のように窓の影 波多野真代
天高く欠伸して旅始まりぬ 志鎌 史
秋晴の空の端っこ富士筑波 蓮尾 碩才
風邪心地宇宙の果てを見て戻る 相田 勝子
ほころびし記憶の底に返り花 酒井眞知子
風葬の白樺木立秋日落つ 土田美穂子
ちちははに寄り添うように木守柿 下津 加菜
秋の暮鬼哭のごとく鷗鳴く 岩政 耀男
秋の雨今日はこれから熱海まで 五十嵐美紗子
石庭の渦より生まれ冬の蝶 川口 史江
曳き売りの焼芋うまし戦中派 辻 哲子
【山崎主宰の編集後記】
芭蕉に”句は天下の人にかなへる事やすし、一人二人にかなふる事かたし”という言葉がある。要するに一般受けのする句を作るのは易しいが具眼の士に認められるような句を作るのは難しい、ということである。私達の俳句に置き換えて云えば、たくさん点の入るような句は警戒を要するということで、それよりもこの人と思う士に評価されるような句を作るべし、ということになろう。
師(先生)は一人ということとも通底する大切なことである。 (Y)
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