響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2016年4月号より

響焰2016年4月号より

【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201604

ささら雨            山崎 聰

体内を水かけめぐる二月かな
半眼でものを思えば凍てにけり
生者死者しどろもどろに雪が降る
飛鳥はとおし侘助ふたつみつよっつ
きょうひとり逝き大空から雪片
雪降って降るみちのくも奥の奥
鳥帰りそのしんがりの天馬かな
おおかみに父性のもどりささら雨
木の芽風戦争がそぞろあるきして
饅頭を食い日脚伸ぶなど思う

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2016年1月号より

震災忌過ぎ浅草の人力車        和田 浩一
火と水と夢の音して紅葉狩       森村 文子
あたらしい風小鳥来る父帰る      渡辺  澄
星月夜ときどきのぞく貝の舌      小林 一子
躓けば影ももろとも月の道       奈良岡晶子
とんぼうも齢も加速して迷う      河津 智子
山が呼ぶから十月の特急券       西  博子
穂芒やゆるやかに鉄路は西へ      高橋登仕子
憎らしき鳥に熟柿の十四五個      大見 充子
天の川から手紙くる行くことに     小林マリ子

<白灯対談より>

爆笑のあとの沈黙そぞろ寒       蓮尾 碩才
落葉舞う手足の細い少年と       松村 五月
少女くすくす桃色のシクラメン     土田美穂子
初詣置いてけ堀のよごれ猫       多田せり奈
うす闇をたどりてゆけば大旦      佐藤由里枝
動かざるふるさとの山七草粥      志鎌  史
道曲がるたび白梅の一二輪       笹本 陽子
雪が降る過ぎしいろいろ消しながら   相田 勝子
お気に入り一つ身につけお正月     笹尾 京子
年賀状いつもの猫のほかは猿      江口 ユキ
冬木立鳥の声なく風もなく       小澤 裕子
ほつほつと小犬と老人大枯野      浅見 幸子
山茶花の白をこぼして父の旅      酒井眞知子
合理的家事散乱を許して冬       大竹 妙子
おのが影に躓いている羽抜鶏      中野 充子
極月の呟き洩れてアップルタルト    波多野真代
序破急の型を演じて冬の風       平尾 敦子
どんどんと過去は不詳に朝の雪     川口 史江

 

【山崎主宰の編集後記】

 ”何”を”どのように”書くかは、俳句にとって大きな問題である。しかしこれほど不確かなものもない。作家の川上弘美さんは、(小説において)”何”と”どのように”は不離できない、と云う。そして”何”が最初からあるわけではない。”どのように”の選び方によって”何”は変化する。それにつれて”どのように”も移ってゆく、と云っている。助詞一つで全体の意味が全く変ってしまう俳句のような小さな詩型では尚更で、思い当ることが多い。    (Y)

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