【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202205
どこまでも 山崎 聰
西日燦彼の眼の中にいるわたし
楽しきは夏満月の下の丘
双子パンダ誕生し森は秋
だんだんに死後見えてくる十三夜
夕月夜コロナの闇をいつ抜ける
秋の風十二丁目の角で会い
十三夜こえを出さねばさびしくて
丘に行くまいにちの道朴落葉
パリからの荷物が届き寒い朝
どこまでも青空と海冬の景
【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202205
春を彩る 米田 規子
きさらぎや岬の白いレストラン
まずクロッカスが咲いて彼と彼女
春を彩るかまくら野菜アトリエに
美術館出てひとごえと春落葉
はくれんの大きな蕾明日の空
時短にてハッシュドビーフ木の芽雨
ひとりきりの夜の片隅フリージア
おぼろから生まれスマホの文字の数
逃げてゆく時間のしっぽぺんぺん草
今日を生きあしたのいのち花三分
【山崎名誉主宰の選】
<火炎集>響焔2022年2月号より
山の陽は父の温もり吊し柿 栗原 節子
空白の夢を見ている枯木山 森村 文子
赤も黄もわたくしの色秋深む 松村 五月
寂しさはこの空の青檀の実 河村 芳子
突き抜けた先のその先十一月 山口美恵子
八合目越えて大空赤とんぼ 楡井 正隆
青空に近い方から柿をもぐ 中村 直子
風景が押し戻されて芋嵐 加賀谷秀男
冬の川きらめく都会横切って 小林 基子
沈黙の重さに耐えかねて石榴 石谷かずよ
【米田主宰の選】
<火炎集>響焔2022年2月号より
らりるれろ草書体にてやなぎちる 石倉 夏生
山の陽は父の温もり吊し柿 栗原 節子
冬の雨離ればなれに人のいて 渡辺 澄
赤も黄もわたくしの色秋深む 松村 五月
もみじ葉を一枚拾いまた歩く 蓮尾 碩才
犬吠えて十一月の空の青 秋山ひろ子
冬に入る足音のみの朝の駅 小林 伸子
山にはやまの人にはひとの月明り 小林マリ子
たてよこに言葉をさがし秋の蝶 小林多恵子
どこまでもおおぞらひつじ雲つれて 大竹 妙子
【米田主宰の選】
<白灯対談より>
浅き春絵柄ふくらむエコバッグ 金子 良子
犬が鳴きからすが鳴いて底冷えす 原田 峰子
るんるんと空をはみ出す春日傘 牧野 良子
彼の世まで転がしてやる毛糸玉 菊地 久子
旋回の首長き鳥冬うらら 鹿兒嶋俊之
冴返る無音の中の砂時計 横田恵美子
三寒四温古書店の自動ドア 佐藤千枝子
骨壺に萌黄の絵付北颪 齋藤 重明
【白灯対談の一部】
浅き春絵柄ふくらむエコバッグ 金子 良子
ここ数年の間に、すっかり私たちの生活に定着した〝エコバッグ〟。単にレジ袋の代わりだけでなく機能性やファッション性も加味され、便利な生活用品として常に持ち歩く。
掲句はそんな身近な〝エコバッグ〟を俳句に詠み込んだ一句だ。日常の暮らしの中での小さな発見とそれをどう一句にするか、拵え方も大切だ。袋がふくらむと云う俳句は時々見かけるのだが、この句は〝絵柄ふくらむ〟とより具体的に詠んだのでどんな〝絵柄〟がふくらんだのだろうかと読み手の想像力が刺激されるのだ。
一方、〝浅き春〟はまだ寒い中で二月の空や風が明るくきらめいて、あちこちに春の兆しを見つける時期である。人々の気分も少しずつ春めいてくる。だから〝浅き春〟と〝絵柄ふくらむ〟の取り合わせはとても楽しい春の気分だ。作者の今を描いた佳句だと思う。
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