【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202412
最 終 章 山崎 聰
いちにちは東京におり春の雨
金盞花見事に咲いて春がゆく
山国の近くに住んでほととぎす
房総のまんなかさびしかたつむり
新しき世界はじまる鯛の海
朝顔の赤いところを見てふたり
新しき人を迎えて山の蟬
過ぎてしまえば一日という秋夜
奥山に風吹きとおり秋さりぬ
東京へ行ったり出たり秋の蟬
【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202412
秋 の 七 草 米田 規子
千日紅老いて親しきお隣さん
同病の話が弾み水引草
秋の七草ゆったりと書く大きな字
葱がまだ細いとメニュー変更す
赤とんぼ忘れかけたる加賀言葉
青蜜柑ちから抜くこと難しく
花野を走るたのしみを待つように
老人もゲームするなり暮の秋
竹の春ざわざわなにか急く思い
金木犀いちにちを濃く生きている
【山崎名誉主宰の選】
<火炎集>響焔2024年9月号より
晩年の入口出口月おぼろ 和田 浩一
沈黙のグランドピアノ日の盛り 加藤千恵子
未央柳遠景に教会の塔 相田 勝子
鎌倉暮色せせらぎと苔の花 川口 史江
猫の道へくそかづらの中へ消え 小林多恵子
青葉雨上がり東京の龍田川 廣川やよい
夏帽は別れの涙掬うため 藤巻 基子
町角はなんじゃもんじゃの花の中 鹿兒嶋俊之
どこまでもつばな流しの海岸線 石谷かずよ
紫陽花の色にあつまる雨後の風 北尾 節子
【米田主宰の選】
<火炎集>響焔2024年9月号より
晩年の入口出口月おぼろ 和田 浩一
冷蔵庫の中の灯りも冷えてをり 石倉 夏生
カナリアに教えてあげる虹の色 松村 五月
月の淡し羽化するように更衣 大見 充子
ことのほか自由は重く杜若 河村 芳子
遠い雷隅から埋まる喫茶店 和田 璋子
先生のうしろ大空夏燕 小川トシ子
梅雨の木の中の一樹が哲学す 吉本のぶこ
夏の果誰もが一度ふり返り 加賀谷秀男
茅花流し大川どっと大海へ 藤巻 基子
【米田規子選】
<白灯対談より>
世の戦わが身のいくさ八月尽 原田 峯子
山の辺の道つれづれの柿日和 増澤由紀子
ちちははの声に囲まれ曼珠沙華 牧野 良子
夕蛍故郷の森の重さかな 酒井 介山
引潮に舟底低く秋の昼 中野 朱夏
おもいではここでとぎれて萩の坂 横田恵美子
これからはひとり秋冷の電話鳴る 菊地 久子
台風の気儘人間の気儘 鷹取かんな
無垢な子の瞳に揺れて秋桜 原 啓子
飛び乗ってバイクのうしろ夏休み 伴 恵子
満席のピンシャン体操水の秋 長谷川レイ子
秋暑し猫と気ままにユモレスク 辻 哲子
虫時雨この世の絶えることのなく 伴 恵子
行き合いの空肩にふと赤とんぼ 朝日 さき
新涼や歌舞伎役者の声の張り 野崎 幾代
睫毛濡れアランドロンの逝った夏 岩井 糸子
手際よく朝餉ととのい涼新た 櫻田 弘美
豊年や声の大きな村娘 山田 一郎
【白灯対談の一部】
世の戦わが身のいくさ八月尽 原田 峯子
人はそれぞれ何らかの〝いくさ〟を抱えて生きている。だから掲句の〝わが身のいくさ〟にハッとする思いだ。〝わが身のいくさ〟は心の問題なのか病気なのか事情は様々だと思う。この句の良いところは、余計なことは語っていないということだ。〝世の戦〟と〝わが身のいくさ〟を並列に置き、あとは何も言っていない。体言だけで作られた、きっぱりとした作品だ。上五中七下五、それぞれの措辞の印象が強く、読後に考えさせられることがどんどん膨らむ秀句と思う。
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