【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ Kaiko_2502
『海紅』 (山崎 聰 第一句集) より
童話の顔で少年悴み丘の午後
ふぐりもつ吾子三月は鳥の色で
林檎甘し遠く昏睡の海が見え
鷗までとどかぬ怒声朝霙
春怒濤白く没陽を余す谷戸
紙飛行機を飛ばし田のない村の子供
夜はふくらむ雪嶺母の椅子軽し
鮑食うくたくたくたと春ネオン
声透る雪夜華やぐ指があり
雪山の灯を踏むしくしくしくと風
(昭和37年~44年)
松村 五月 抄出
【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202502
花アロエ 米田 規子
紅葉かつ散り月餅を賜りぬ
母の忌や真青に茹でる大根葉
三人の都合が合わぬ花八ツ手
鬼の子とこたえの出ない問題と
食卓に資料と蜜柑さあどうする
楽園をもとめて尖る花アロエ
冬木立抜けしあわせは摑むもの
湯豆腐を囲みほろほろと加齢
カレンダーにあふれる予定山眠る
一月や淡きひかりの朱塗椀
【米田主宰の選】
<火炎集>響焔2024年11月号より
穏やかな八十路の一日天の川 和田 浩一
鶏鳴や山にかこまれ稲育つ 栗原 節子
白さるすべり老人の反抗期 中村 克子
手花火の火玉の尽きるまでは恋 松村 五月
耳鳴りか夕暮れなのか蟬しぐれ 秋山ひろ子
声かけて風につながる凌霄花 鈴木 瑩子
短夜のワイングラスに巴里の空 小林多恵子
膝抱けば野にあるごとし法師蟬 吉本のぶこ
秋燕思いはすでにここになく 加賀谷秀男
炎暑なおピカソの青に浸りきり 齋藤 重明
【米田規子選】
<白灯対談より>
冬の蝶ふわりふわりと生きる場所 伴 恵子
いつも晴れて母の記念日十一月 中野 朱夏
山肌に蜜柑のたわわリス飛んで 原 啓子
一列に真赭の芒夕映える 野崎 幾代
原因は頑固な私そして冬 朝日 さき
再会のほんのり甘く通草の実 鷹取かんな
菊花展抜けて喫茶のモンブラン 原田 峯子
あの人に寄せた想いを銀杏黄葉 岩井 糸子
冬ぬくし土偶女体の健康美 長谷川レイ子
これからも正直に生き木の葉髪 山田 一郎
秋夕焼来し方ゆく末御手の中 辻 哲子
団栗に目と口を描き空ひろびろ 櫻田 弘美
【白灯対談の一部】
冬の蝶ふわりふわりと生きる場所 伴 恵子
掲句のオノマトペ〝ふわりふわり〟は冬蝶の優美とも弱々しいとも思える飛翔そのものを表わすことばとして十分納得できる。しかし、その後の結句〝生きる場所〟という措辞にハッとさせられた。その飛翔は必死に〝生きる場所〟を探す冬蝶の生きざまを見るようで胸に刺さった。大胆な着地が読者にインパクトを与え、一句として味わい深い作品である。
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