【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ Kaiko_2503
『海紅』 (山崎 聰 第一句集) より
雪夜道男女並んでまた離る
母がいる雪国星に言葉とどく
まなうらに母あり桜散る海があり
雛の日あたたかく足重ねおり
一年生光るとき朝のおたまじゃくし
音楽やあたたかき夜の失語症
深山桜ふりむきて絵のごとき顔
朴咲いて夜が分厚くなる訣
笑いたし今日桜散り艦が着き
水よりも赤き一日かじか殖え
(今号から季節ごとに抄出)
松村 五月 抄出
【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202503
寒 卵 米田 規子
抜け道の臘梅香る直売所
山笑う削ることばと足す言葉
味噌汁にポンと滋養の寒卵
平常心どこかに忘れ赤いマフラー
電子辞書閉じて開いて冬深む
しろじろと枯野の先の大病院
待春の手紙にそっと胸の内
坂道をすいすい漕いで春隣
春来る三枚重ねのパンケーキ
三寒四温ペン胼胝のいとおしく
【米田主宰の選】
<火炎集>響焔2024年12月号より
戦争と隣合せに秋うらら 石倉 夏生
良夜かなひとり歩きの一行詩 加藤千恵子
天高し前後左右に老いてゆく 中村 克子
十月の光の中に父のいて 松村 五月
ただいまと呟くだけの秋夕べ 河村 芳子
墜ちてきそうな満月へピアノ弾く 波多野真代
深く考えなくていい月夜のうさぎ 小川トシ子
夕焼けに染まる一村牛の声 戸田冨美子
晩年やレモンの香りひとしずく 大森 麗子
まっとうな曲がり角なり九月尽 大竹 妙子
【米田規子選】
<白灯対談より>
人去りし庭に咲きつぐ花八手 中野 朱夏
つり皮のおもわぬ高さ年の暮 原田 峯子
銀鼠の帯をきりりと月冴ゆる 原 啓子
賀状書く未来くっきり芋版画 長谷川レイ子
惜しみなき喝采風の散紅葉 辻 哲子
今日こそは開かんとする冬薔薇 鷹取かんな
雑踏の東京に来て初雪や 朝日 さき
冬の雲流れる先は母の許 伴 恵子
冬帽子深めにかぶり二人旅 櫻田 弘美
日向ぼこ心豊かに発酵す 野崎 幾代
故郷は遥か向こうに冬苺 山田 一郎
穏やかな友と語らいクリスマス 岩井 糸子
【白灯対談の一部】
人去りし庭に咲きつぐ花八手 中野 朱夏
〝花八手〟はさまざまなシーンで違った表情を見せてくれる不思議な花だと思う。明るい花でもあり、またやや暗い花とも言える。掲句の〝花八手〟はその両面を合わせ持っているようだ。一方で〝人去りし庭〟とは誰も住んでいない空家の庭なので、音も無くひっそりとしているだろう。それでも晴天の日などには、生き生きと元気に咲いている〝花八手〟を見ることができるのだ。そんなごくありふれた風景を上手く一句にまとめた。眼目は〝咲きつぐ〟という措辞。作者が目に止めた〝花八手〟はいろいろなことを語りかけた。
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