【山崎最高顧問の俳句】縦書きはこちら→ Kaiko_2505
『海紅』 (山崎 聰 第一句集) より
村灯り千の花菜にくるしあわせ
太陽の沼に浮き泰山木の花
酒蒸しの肉食う街に桜咲き
兵生きて海の円さへ散るさくら
桃のように桜咲き坂の上の墓
桜おわり対岸の灯に赤ン坊
愛おわる火薬庫の前桃咲いて
島山のいのちを灯し桃さくら
薄目していちにちけむる雪柳
桃食べて風の生毛の今日終る
松村 五月 抄出
【米田名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202505
春 の 森 米田 規子
待つことたのし八重椿ぱっちりと
よろこびのふくらむときを囀れり
葱坊主こわばりやすき肩と首
切株の苔むしている春の雲
春の森から長身の老紳士
逢瀬のごと古木にひらく梅の花
ひそやかに菫がうたう縁切寺
北鎌倉の小さな駅舎春三月
子らの声散らばって消え春夕焼
じゅうぶんに花のいのちをさくら色
【松村主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202505
余 寒 松村 五月
冬の陽を賜りことば惜しみおり
あたたかき子宮をもちて雪女郎
空低く冬の帽子が赤過ぎる
あかときの忘れられたる桜貝
オムレツに塩と胡椒と囀と
桜鯛泪のあとのありにけり
水鳥の低く飛びおり多喜二の忌
人はみな大木の下春隣
新宿のコインロッカー余寒かな
春二番父が泣いたり笑ったり
【米田名誉主宰の選】
<火炎集>響焔2025年2月号より
結局は不埒を重ね十二月 石倉 夏生
影が重なる直角の街晩秋 栗原 節子
青山通り笑いつつ冬来たる 加藤千恵子
冬麗の橋を渡りて赤い鈴 小川トシ子
忘れ物のように我いて秋の風 秋山ひろ子
秋晴や三国峠を越えて海 楡井 正隆
このいまを鳴いておかねばちちろ虫 大森 麗子
百歳の一汁一菜桃の花 吉本のぶこ
残響は銀のつぶなり冬の滝 菊地 久子
ぞうさんの体重測定豊の秋 増澤由紀子
【松村主宰の選】
<火炎集>響焔2025年2月号より
朝の秋思は曇る鏡の中の海 石倉 夏生
水音は母の音なり今朝の秋 中村 克子
選択肢あまたのあれど冬の金魚 大見 充子
紅葉かつ散る屈託のなき彼彼女 河津 智子
晩秋を映し薄墨色の川 佐々木輝美
七十路やリンゴ固きを愛したもう 山口美恵子
ほがらかな日暮甘藷の蒸しあがる 鈴木 瑩子
冬薔薇のトゲ秘密のごとく痛し 川口 史江
秋風に眼裏ありぬおとうとよ 吉本のぶこ
林檎は輪切りたまご半熟元気な日 廣川やよい
【松村五月選】
<白灯対談より>
春浅し川辺に浮かぶ紙風船 山田 一郎
北窓に里の記憶の隙間風 長谷川レイ子
からからと豆炒る音や春隣 原 啓子
逃水の中をくるくる三輪車 鷹取かんな
寒椿ひとひらごとに友のこと 伴 恵子
竹の秋荷風愛した街に立ち 原田 峯子
退屈な長椅子ずらりとシクラメン 辻 哲子
初鏡手児奈の如くありし頃 朝日 さき
初雪や母の笑顔のさみしさに 櫻田 弘美
ファインダー覗けば揺れる冬満月 岩井 糸子
【白灯対談の一部】
春浅し川辺に浮かぶ紙風船 山田 一郎
川辺とは川のほとりのこと。掲句は浮かぶと言っているので、川の水が微かに揺蕩っているところだろうか。忘れられたかのように浮かぶ紙風船。さっきまで誰かが遊んでいたのだろう。紙風船だからそんな想像もできる。
寂しさだけではない明るさも感じるのは季語の〝春浅し〟によるところが大きい。春先の微妙な風情が感じられる佳句である。
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