響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2025年月6号より

響焰2025年月6号より

【山崎最高顧問の俳句】縦書きはこちら→ Kaiko_2506

『海紅』 (山崎 聰 第一句集) より

男光りいてあじさいの紺ばかり
鮑うごく桜見てきしにんげんに
とかげの眼暗澹とあり日曜日
明日ありて燕返しに銀の海
朝がきて踊子草を跳ぶ別れ
坂の道このごろ曇り八重桜
生きており五月の椎の暗い森
夜の川を棺がとおり梨の花
花朴のころ音消えて山と川
山ふくれ死は六月の風の中


松村 五月 抄出

【米田名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202506

桜  餅      米田 規子

干して畳んで晩春のふくらんで
春菊やこの淋しさは何処から
詩を離れひと日降りつぐ花の雨
桜餅いくつになっても華やいで
散るさくらピアノの音色艶めいて
姉の背を越す勢いの春祭
筍の土の湿りごと抱き帰る
鬱々と目覚めいっせいに木の芽風
夏はじめ筋肉足りない左腕
ゴールデンウイーク定位置に塩・さとう

 

【松村主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202506

重  心      松村 五月

春の雪ははの残せしことばとも
蜂蜜の金色春の重心か
揺蕩いて桜咲くまでもうすこし
日本を凝縮すれば桜餅
桜待つ白線よりも内側で
靴音のやわらかくなり雨水かな
三寒四温旅人のひとりなり
シマウマの縞を滲ませ春の雨
人の世を狭し疎しと燕かな
かの地にも三色すみれ咲くだろう

 

 

【米田名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2025年3月号より

落葉が香り父の忌の己が影        和田 浩一
声をかけられ綿虫を見失ふ        石倉 夏生
秋深む仕事帰りの母の声         栗原 節子
馬肉屋の後に深川酉の市         蓮尾 碩才
とうきょうが俄かに遠く冬の星      河村 芳子
冬りんご太陽よりも明るくて       秋山ひろ子
民生委員まず冬バラをほめてより     佐々木輝美
林檎の真っ赤ほがらかな空があり     鈴木 瑩子
時間が足りぬ十二月の青空        廣川やよい
短日をはみ出している子等の足      加賀谷秀男

 

【松村主宰の選】

<火炎集>響焔2025年3月号より

落葉が香り父の忌の己が影        和田 浩一
白鳥に重さありけり迫りくる       渡辺  澄
極月の途方にくれて駅ピアノ       大見 充子
恋とも云えぬ青きもの冬銀河       波多野真代
空の途中山の途中のからすうり      秋山ひろ子
風吹いて街の濃くなる十一月       小林多恵子
寒林の奥はみずみずしき失意       吉本のぶこ
短日をはみ出している子等の足      加賀谷秀男
足音の残す足あと霧の街         池谷 照子
シリウスの匂いをつけて犬もどる     牧野 良子

 

【松村五月選】

<白灯対談より>


歩くほど夕日に近く春の川        原田 峯子
今生きてよき人に会う春の昼       野崎 幾代
満開の梅あらわれて雨上がる       伴  恵子
おひさまの手のなりほうへ黄水仙     増田 三桃
置かれたる石のぬくもり花時計      長谷川レイ子
幼子の頬のあめ玉春はじめ        原  啓子
厨に小豆建国記念の日          鷹取かんな
春夕焼フォークソングの似合う街     朝日 さき
ゆっくりと加齢白椿まぶしくて      櫻田 弘美
傾きし巣箱の中に小鳥来る        山田 一郎
春よ来いミャンマーの少年兵に      辻  哲子
この春の街の灯りを消した人       岩井 糸子

【白灯対談の一部】

 歩くほど夕日に近く春の川        原田 峯子
 春の陽気に誘われて、川のほとりを歩いているのだろうか。暑くもなく寒くもない。気持ちのいい夕間暮れ。正面にはきれいな夕日。歩けば歩くほどその夕日に近くなるようだと感じた。
「近づく」としないで「近く」と言い切った。その独断がより詩情を醸し出している。失敗を恐れずに思い切った発想が詩情に繋がる

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