【山崎最高顧問の俳句】縦書きはこちら→ Kaiko_2508
『海紅』 (山崎 聰 第一句集) より
ポップコーン子が寝て夏の海の匂い
梨の花銃声夜の底よりす
シュピレヒコール桜桃を捥ぐ手の生毛
夾竹桃咲けり怠惰に生コン車
すぐ鳴きやむ町のかなかな戦後家族
へろへろと笑い影踏み終戦日
氷菓崩す今日ぼろぼろの茜雲
爆音が眠しみどりの昆虫館
八月十五日踵に虻とまる
別れたくなく夕焼けが川の幅
松村 五月 抄出
【米田名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202508
夏 匂 う 米田 規子
竹皮を脱ぎ午後からの雨催い
母性とも白あじさいのふくらみに
夏鶯足腰しかと急な坂
花束をふわりと腕に夏匂う
家路にぽっと灯り枇杷の実のたわわ
ふたりの会話風にさらわれ鴨足草
詩を見失い紫陽花に溺れけり
植木屋の末っ子跳ねる夏の空
きょうの健康夏草に負けている
それぞれの傾きグラジオラスの空
【松村主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202508
宛 所 不 明 松村 五月
薔薇を折る雨の匂いのそのままに
泣きながら生まれたような春の虹
新緑をふるわせており赤子泣く
少年の角曲がるとき新緑す
宛所不明とありぬ花の昼
ハンカチに包むきれいなさようなら
薫風や家出のごとく荒川線
蝶とまる父の書棚の三段目
正面にあの日の父や花の雨
花に雨父いつまでもいつまでも
【米田名誉主宰の選】
<火炎集>響焔2025年5月号より
大寒の灯や晩学の虫めがね 和田 浩一
訛には訛で応じしもつかれ 石倉 夏生
冬桜この一本は詩歌かな 渡辺 澄
使い切る命あるらし落椿 大見 充子
黄昏れて大根の葉の豊かさよ 河村 芳子
いつまでも四女のままで雛かざる 河津 智子
風花の過ぎし青空久女の忌 相田 勝子
ぼろ市にむかしの午後の佇っており 鈴木 瑩子
石畳影ずきずきと寒月光 大竹 妙子
空っ風しどろもどろを翻す 藤巻 基子
【松村主宰の選】
<火炎集>響焔2025年5月号より
くねりつつ径は続きぬ春祭 栗原 節子
冬の雨誰かのために傘持って 渡辺 澄
列島の半分は雪肩の凝り 蓮尾 碩才
角一つ違えて寒夜母居らず 和田 璋子
反抗心忘れぬようにある寒夜 北島 洋子
騒がしきこの世の外に冬すみれ 相田 勝子
ぼろ市にむかしの午後の佇っており 鈴木 瑩子
日脚伸ぶ影の生まれる帰り道 中野 充子
花びらを果てしなくしてラナンキュラス 大竹 妙子
主なき椅子の傾き春近し 北尾 節子
【松村五月選】
<白灯対談より>
おじいさんと孫とそら豆青い空 原 啓子
春満月縄文人とすれちがう 中野 朱夏
はつ夏へガタンゴトンと荒川線 伴 恵子
囀りや玉子焼きなどふっくらと 原田 峯子
後ろからたんぽぽの絮ねこぐるま 鷹取かんな
玄関の鏡に映る金魚かな 山田 一郎
診察を終えてふたりの柏餅 増田 三桃
あるときはぼうたんとなり華やげる 野崎 幾代
夕映えに染まる雪富士父と居て 辻 哲子
もやもやに薄化粧して五月晴れ 櫻田 弘美
早稲田までのんびり行こう若葉寒 朝日 さき
【白灯対談の一部】
おじいさんと孫とそら豆青い空 原 啓子
衒いのない素直な句に好感を持った。この時の作者の気持ちがダイレクトに伝わってくる。句を構成している四つの名詞がすべてであり、それで十分なのだ。そら豆が二人の真中にあり、笑顔が見え、歓声が聞こえる。そして空は青い。
なんと気持ちのいい、幸せな句なのだろう。
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