【山崎最高顧問の俳句】縦書きはこちら→ Kaiko_2509
『海紅』 (山崎 聰 第一句集) より
ライターに霧海紅豆花おわる
鹿の眼の四十はじまる没陽の中
コーヒールンバ虹の下から犬連れて
腹這いて紺碧の死をみつめいる
ハイビスカス鳥の眼で逢う恋人たち
灯ともりてなお暗がりの海紅豆
訣れあり昼をよごれて海紅豆
八月九日雨が降り夜も降る
川曲るところ翳りて蛇の肌
墓も見ゆ晩夏は山の音消えて
松村 五月 抄出
【米田名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202509
アガパンサス 米田 規子
南天の花の勢い雨と風
晩節に夢の増えゆく夏の雲
目が笑いアガパンサスの好きな人
ふるさとの風の匂いや青山河
今ふうの墓標に変わり蟬の穴
体内のくらがりを抜け蓮の花
バッタ跳ぶむずかしいこと言わずとも
やっかいな自律神経風死せり
サン・サーンスの「白鳥」を弾き秋隣
ちちの背に声をかけたし秋の浜
【松村主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202509
夏を待つ 松村 五月
夏帽子波音を聴くそのために
五月雨に暮れるいちにち貝眠る
雨ならば頬杖をつき桜桃忌
昭和式パフェのてっぺんさくらんぼ
長靴にリズム生まれる青梅雨や
空の色地の色映しシャボン玉
輪郭は夕空にあり酔芙蓉
小鳥抱くごと白桃をいただきぬ
何か云うまろき父の背夏を待つ
細る父蛍袋の白さほど
【米田名誉主宰の選】
<火炎集>響焔2025年6月号より
はるのゆき渡良瀬川の闇を消す 石倉 夏生
春を待つ会えない人を待ったから 渡辺 澄
雑巾の縫い目に妣や月おぼろ 大見 充子
春の雷野菜断面いとおかし 河村 芳子
雪女らしいとありし備考欄 北島 洋子
雑踏の黒で始まる春愁 戸田冨美子
ひらがなのように桃咲く老いたれば 吉本のぶこ
北国に春颯爽とハイヒール 廣川やよい
永き日を舟漕ぐように過しおり 淺野 浩利
昭和百年さりながら花吹雪 齋藤 重明
【松村主宰の選】
<火炎集>響焔2025年6月号より
春を待つ会えない人を待ったから 渡辺 澄
濡れている桜月夜のすべり台 加藤千恵子
人もまた影の一つに冬木立 中村 克子
雪女らしいとありし備考欄 北島 洋子
てのひらに母いた家に春の雪 秋山ひろ子
雑踏の黒で始まる春愁 戸田冨美子
わが雛買われてゆき被爆せり 相田 勝子
一本は正午のひざし夾竹桃 吉本のぶこ
黄砂来る広げたままの歎異抄 菊地 久子
囀や角まるくなる愛読書 金子 良子
【松村五月選】
<白灯対談より>
チェンバロの調べのように濃紫陽花 増田 三桃
もう一度起ちあがれるか青嵐 中野 朱夏
父の日や休むことなく牛が呼ぶ 鷹取かんな
時の日や日記を埋める二三行 原 啓子
青田風その先をゆく里心 長谷川レイ子
木漏れ日に翅を透かして夏の蝶 野崎 幾代
椅子を出すつばめはすいと曇天に 原田 峯子
天空へはみ出しそうな青田かな 山田 一郎
青梅は海より青く清らなり 櫻田 弘美
老夫婦支え合うみち夏木立 伴 恵子
紫陽花のうしろに迫る齢かな 辻 哲子
乗りかえの駅から見える夏の海 朝日 さき
【8月号追加分】
風に聴く揃いのシャツの労働歌 長谷川レイ子
【白灯対談の一部】
チェンバロの調べのように濃紫陽花 増田 三桃
チェンバロとは、古い鍵盤楽器でピアノの祖とも言われている、とはネットの情報。映画「アマデウス」で神聖ローマ帝国の皇帝が弾いていた印象がある。鍵盤がピアノとは白黒が逆で音ももっと軽やかだったような。
掲句は濃紫陽花を、そんな楽器の調べのようだと言っている。「ように」咲いているのか、それとも存在がそのようだというのか。それは読者が決めればいい。こう捉えた、というところが詩心そのものなのだ。
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