響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2026年1月号より

響焰2026年1月号より

【山崎最高顧問の俳句】縦書きはこちら→ Kaiko_2601

『海紅』 (山崎 聰 第一句集) より

山国の陽に霧の疵四十過ぐ
友といて友の匂いの蜜柑むく
ふぐりあたたまり山頂の墓に雪
日当たりて憎悪のときの朴落葉
ポケットに真珠と蜜柑別れがきて
こころ融けはじむまいにち雪降って
風花やうしろにもあたたかきもの
風の昼干されて鱈に眼がふたつ
スケーターワルツその夜の雪の山
鱈干すや兄弟の墓同型に
松村 五月 抄出

【米田名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202601

初しぐれ      米田 規子

上野秋色ほろ苦いチョコレート
ゴッホ展横目に秋冷しのびよる
いつまでも語り晩秋大きな木
ここよここよ落葉の走る南口
白髪も杖もいとしき小春の日
はつ冬の雲湧きカフェの二人かな
冬の灯やリュックふくらむ帰りみち
エプロンの紐をきりりと初しぐれ
しあわせのかたちはなくて実南天
リハーサル終え唐突に十二月

 

【松村主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202601

利 き 足      松村 五月

誰かれと迎え十月の木のベンチ
利き足はどうやら左虫の闇
往の道復も通りて鵙の声
こまごまとしたもの赤く秋の店
烏瓜彼岸見てきた色をして
地平線見えぬ東京時雨けり
紫にもっとも近き秋の蝶
いつまでも続く暑さのごとく老ゆ
木犀のこぼれきるまでこぼるるよ
十月を眠りつづける父の髭

 

【米田名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2025年10月号より

まっさらな月日に戻る百日紅       渡辺  澄
喋らねばてのひらさみし熱帯夜      中村 克子
万緑や声だけ残る豆腐売         大見 充子
青柚子や焙烙を置く庭の夕        河村 芳子
梅雨明けや角を曲がってつり具店     岩佐  久
どうしても届かぬ高さ胡桃咲く      和田 璋子
夕日まだ四つ角にあり凌霄花       小林多恵子
湖風のもつれるあたり半夏生       石谷かずよ
かたつむり圧倒的な歩みして       加賀谷秀男
白南風の生まれるところ埴輪の目     池谷 照子

 

【松村主宰の選】

<火炎集>響焔2025年10月号より

まっさらな月日に戻る百日紅       渡辺  澄
喋らねばてのひらさみし熱帯夜      中村 克子
万緑や声だけ残る豆腐売         大見 充子
夏蝶の後につづけば分かれ道       河村 芳子
夏野来て両手両足老いにけり       和田 璋子
昼の金魚夜は優雅に翻る         秋山ひろ子
遠き日の向こう水無月ちとはは      河津 智子
晩春のお伽草子をみるように       鈴木 瑩子
噴水のほとり裸婦像の休息        石谷かずよ
炎天や人間小さく立っている       増澤由紀子

 

【松村五月選】

<白灯対談より>


うつくしき齢の兄や今年米        増田 三桃
一人居のひとりの旅の大花野       原田 峯子
帛紗さばく手の滑らかさ萩の風      原  啓子
星月夜それでも重きわが身かな      中野 朱夏
古寺の塀をはみ出す柘榴かな       須藤 寿恵
鶏頭や燃やす命のあるうちに       伴  恵子
小鳥来るおこわの蒸るる露地通り     長谷川レイ子
夕映に和む茶の花鐘が鳴る        鷹取かんな
星月夜右岸左岸をゆっくりと       辻  哲子
台風来不動明王のような父        朝日 さき
秋の蟬張り裂けそうに飛び立てり     野崎 幾代
柿の秋朝陽まぶしき隣家かな       櫻田 弘美
金木犀シャンパングラスの細き泡     佐藤真由美
初時雨石段登る猫の顔          山田 一郎

 

 

【白灯対談の一部】

 うつくしき齢の兄や今年米        増田 三桃
 ここで言う「兄」とは「義兄」とのこと。農業をやってらっしゃるお兄様は、とても素敵な方で尊敬されているとご本人談。
 〝今年米〟という季語には、実りに感謝する気持ちも込められている。ただ新米という物として詠んだのでは季語を活かせない。掲句のように詠むことによって、作者の伝えたい心も見えてくる。〝うつくしき齢〟にも感謝と親愛の気持ちが読み取れる。

«

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*