【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201504
火力聴力 山崎 聰
細雪少年二人上京す
退屈のやがて大きく豕(いのこ)の日
一月のあえかな光かの大樹
寒鯉のまなこの中を泳ぐなり
ありったけの火力聴力冬籠
約束は雪の比叡の下り坂
真実のかたちも見えて寒卵
雪が降りおわりなきものとして山野
地底蠢ききのうきょう吉野は雪
匂い立つものもなくなり冬の草
【山崎主宰の選】
<火炎集>響焔2015年1月号より
月光の全量を浴び帰郷せり 石倉 夏生
黄落の内そと目を閉じて覗く 森村 文子
狐火に照らされてこの国は在り 渡辺 澄
炎立つ曼珠沙華なら淡墨で 山口 彩子
そっと呼ばれてふりむけば秋明菊 川嶋 悦子
憲法の外側に居て秋深し 金 松仙
十月を正面にして観覧車 篠田 香子
にこにことスタートを切る運動会 中原 善江
母の忌のあくる日満月を仰ぐ 田部井知子
天辺はすでに退屈からすうり 土屋 光子
<白灯対談より>
異国語の往き交っている冬景色 志鎌 史
少年の岸を離るる寒の明け 佐藤由里枝
立春大吉もんどり打って転ぶ 大見 充子
人日のまわりつづける理髪灯 石井 昭子
風花やふと呼ぶ声のしたような 小笠原良子
梟に見られておりぬみておりぬ 小林マリ子
行く年のまんなかを抜けもどりけり 辻 哲子
着ぶくれて怖るるもののなき背中 相田 勝子
やわらかきものすれちがい初御空 笹本 陽子
遠嶺を思い出ずる日初鏡 多田せり奈
ともがらの淋しくなって大旦 あざみ 精
地下鉄に迷いこみたる空っ風 酒井眞知子
去年今年翼が浮遊しておりぬ 江口 ユキ
葉牡丹の渦の中なるまことかな 中野 充子
看板のジャンヌダルクと冬の街 大竹 妙子
どの国もひとつの地球クリスマス 森田 成子
鶴を折る母娘と隣初電車 川口 史江
二羽そろい冬青空のその先へ 小澤 裕子
人ひとり風の彼方の枯野から 塩野 薫
【山崎主宰の編集後記】
大相撲の横綱白鳳は、モンゴル人だが、日本人以上に日本人の心を持っていると思うことがある。かつて<稽古だけで強くなるのには限界がある。心を豊かにすることも、一人で考え込むことも、一つ一つすべてが努力で、そうしないと強くなれない>と云っていた。
俳句もそうで、ただ作って句会に出るだけでは上達は覚束ない。俳句の土壌を豊かにすること、俳句の視野を広げること、これをやらなければ本物の俳句はできない。 (Y)